このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

美術館 > その他 > その他 > 2022年度 美術館のアクセシビリティ向上推進事業 報告リーフレット オンライン版

2022年度 美術館のアクセシビリティ向上推進事業 報告リーフレット オンライン版 

美術館のアクセシビリティ向上推進事業」は、三重県立美術館が中核となり実施する、美術館のアクセシビリティ(=利用しやすさ)を向上させるための事業です。美術館を利用しづらい人々と協働し、「誰もが利用しやすい環境」を整えることをめざしています。(「三重県立美術館のめざすこと」2018年策定)。
事業3年目となる2022年度は、過去の企画を改良したプログラムの開催に加え、新たな対象に向けた取組や、動画・音声ガイド等コンテンツの制作を行いました。アクセス向上の取組を「特別」ではなく「あたりまえ」の事業として定着・継続させることに努めました。
(助成期間:2022年9月1日~2023年3月31日 *2022年12月12日~2023年3月23日は館内設備改修工事のため休館)

【報告リーフレットPDF(約300KB)】
*PDFは圧縮版のため、音声コードの読み取りには適しません。
*オンライン版では、印刷版の本文に大幅に加筆し、図版も追加しています。読み上げやすさを考慮し、テクストや画像は垂直方向に配置しました。
*掲載したインターネットリソースの最終アクセス日は2023年3月13日。今後アドレス変更やページ更新に伴い、リンク切れになる可能性もあります。
*障がいの害/がいの表記は三重県の方針に基づき「障がい」で統一しました。
https://www.pref.mie.lg.jp/KENKIKA/SOGOH/23460023167.htm

【お問合せ先】
美術館のアクセシビリティ向上推進事業実行委員会事務局(三重県立美術館内)
〒514-0007 三重県津市大谷町11番地
TEL. 059-227-2100(代表)
FAX. 059-223-0570
E-mail: bijutsu2★pref.mie.lg.jp(★を@に)
 

目次 *タイトルをクリックすると該当箇所にジャンプします。

事業報告
1.赤ちゃんのための鑑賞会とその関連プログラム
(1)「赤ちゃんのための鑑賞会2022」
(2)講演会「つながっているよ、描くこと・見ること~子どもの育ちと美術~」
(3)動画「はじめての美術館―赤ちゃん・小さい子どもと美術館を楽しむヒント―」
2.特設コーナー「さわって楽しむ 柳原義達の作品」
3.三重県立四日市高等学校 学校美術館「はじめての美術館」
(1)事前授業
(2)展覧会
4.視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
5.情報保障付き講演会
6.コレクション オーディオガイド

実行委員会構成
謝辞
奥付
 

事業報告

1.赤ちゃんのための鑑賞会とその関連プログラム

(1)「赤ちゃんのための鑑賞会2022」

日時:2022年12月4日(日)①9:45~10:45②11:00~12:00
会場:三重県立美術館 展示室(コレクションによる特別展示「西洋美術へのまなざし―開館40周年を記念して」会場)
講師:冨田めぐみ(NPO法人 赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会 代表理事)
参加者数:0~2歳児と保護者、家族 ①7組19名②7組20名
担当:坂本龍太、鈴村麻里子、内藤由華、原舞子、橋本三奈(いずれも三重県立美術館学芸普及課/以下、特記のない担当者は同所属)
 
2020年度にオンラインで開催した「赤ちゃんのための鑑賞会」を対面で実施。ガイダンスの後、コレクション展示「西洋美術へのまなざし」展の会場を回り、0~2歳児の反応を参加者同士で共有しながら、講師や展覧会担当学芸員が鑑賞のヒントや作品情報を提供した。
開催案内ページ

参加者より
赤ちゃんの様子など(保護者の記録用紙より抜粋 ( )内は参加者の月齢)

「ぱっと目が開くようにみていた。」(0歳10ヶ月)
「カラフルな絵にとても興味を示している。ユニークな形も気になるようだ。」(1歳5ヶ月)
「黒い作品も意外と見ていた(普段は白黒はあまり見ない)。」(0歳11ヶ月)
「『これナニ?』と興味しんしん。『月』と教えてくれた。」(2歳5ヶ月)
「おうちでピアノも弾いているので、色合いが似ているこちら[作品]が気に入ったようです。」(0歳11ヶ月)
「声を出して、声のひびきを楽しんでいた。」(1歳1ヶ月)
「衣装のすそのあたりをじっと見ていた。」(0歳9ヶ月)
「[肖像画の]顔をじーっと見ていた。」(0歳4ヶ月)

保護者の感想(アンケート、メール抜粋)

「美術館は近くにあっても展示室まではなかなか入るのが難しいので今日のような機会は大変ありがたいです。」(2歳0ヶ月)
「思ったよりじっくり絵を見れてとても良かったです。学芸員の方が絵の説明をしてくれて大変勉強になりました。」(1歳5ヶ月)
「色々なものを見せたい、経験させたいと思っていますが、さわってはいけない、走ってはいけないと思うと、2歳を連れてくるのは、とても大変でした。」(2歳5ヶ月)
「子ども達がたくさんいる中で見学できて良かったです。」(2歳5ヶ月)
「ぜひ3才以降のもの[鑑賞会]も作って頂けたら嬉しいです。」(0歳4ヶ月 *3歳1ヶ月のご家族も同伴)
「育児書にはない、親と子供が互いに個性を感じられる学びがあったように感じます。」(0歳8ヶ月)

 赤ちゃんを抱っこした家族が、油彩画を鑑賞している様子

赤ちゃんを抱っこした保護者が、風景画を鑑賞する様子
プログラム実施風景 撮影:松原豊

*目次に戻る
 

(2)講演会「つながっているよ、描くこと・見ること~子どもの育ちと美術~」

日時:2022年12月4日(日)14:00~15:30
会場:三重県立美術館 講堂
講師:冨田めぐみ
参加者数:18名
担当:鈴村麻里子、内藤由華、坂本龍太、藤田響
 
講師がこれまでの実践や調査を踏まえ、赤ちゃんや子どもの鑑賞の傾向や、鑑賞活動と創作活動のつながりについて講演。レクチャー後、質疑応答も行った。
開催案内ページ

参加者より(アンケート抜粋)

「絵を何回も見せることで、子どもの感じ方が変化したり、興味をもつようになったりすることがよく理解できました。また、子どもが内に秘めている良さを引き出すためには、子どもの考えを聞く、少しのアドバイスをすることも大切だと知りました。」
「幼児の母としても、家庭で取り入れたいと思うことがたくさんありました。」
「『美術』というものを難しくとらえていました。が、今日のお話を聞かせていただいて、私たちの生活の中に、とても身近なものであって、どんなとらえ方でもいいんだと思いました。子育て中に聞かせていただきたかったと思いました。なんだかとても素直な気持ちになりました。」

*目次に戻る
 

(3)動画「はじめての美術館―赤ちゃん・小さい子どもと美術館を楽しむヒント―」

公開日:2023年2月9日(木)
企画・協力:NPO法人 赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会
構成・出演:冨田めぐみ
撮影・編集:谷澤陽佑(一部の撮影・録音は三重県立美術館が担当)
映像時間:16分37秒
掲載先:動画共有プラットフォームYouTube(一般公開)
再生回数(3月13日時点):267回
担当:原舞子、鈴村麻里子、坂本龍太
 
限られた参加者や来館者だけでなく、多くの人が手軽に美術館を楽しむヒントを得られる媒体として、日本語字幕付きの映像を制作し、一般公開した。動画では冨田氏が館内外を巡りながら、赤ちゃんや小さい子どもと鑑賞を楽しむための7つのポイントを紹介する。
▼動画公開ページ(外部サイト)
https://www.youtube.com/watch?v=1uyUmn4_bcM

*目次に戻る
 

2.特設コーナー「さわって楽しむ 柳原義達の作品」

会期:2022年11月15日(火)~12月11日(日)
会場:三重県立美術館 柳原義達記念館B室
協力:大阪芸術大学デザイン学科、株式会社J.フロント建装、三重県立美術館ボランティア「欅の会」
展覧会ロゴ、リーフレットデザイン:桑田知明
来場者数:2,290名
担当:髙曽由子、橋本三奈、鈴村麻里子
 
三重県立美術館のコレクションを代表する作家の一人、柳原義達(1910~2004)のブロンズ作品5点を、誰でも触察できる展覧会。触覚による鑑賞の可能性を拓くことで、常設する柳原作品の新たな側面を紹介した。来館者がじっくりと作品に向き合えるよう、会場には腰かけやすい椅子や専用の展示台を設置。ボランティアが作成したアームカバー等も活用し、作品の保存と鑑賞機会拡大の両立をめざした。
開催案内ページ
出品作品解説ページ

看視スタッフより(アンケート抜粋)

質問:来場者のうち、どのくらいの人が彫刻にさわっていましたか

45%程度(21件の回答の平均)

質問:来場者のうち、どのくらいの人が「すわって」彫刻にさわっていましたか

27%程度(19件の回答の平均)

質問:来場者の反応で覚えているものを教えてください

「ゆっくり念入りにさわる人が多かった。」
「『こんな機会はないので』『さわれるのならさわりたい』ということでじっくりと触られる人が多かった。」
「片手でそっとなでる人、両手でもそっと触る人が多かったです。」
「興味を持たれてじっくり全てをなでるようにさわられる方と、ささっとイスにすわらずにさわられる方と分かれていた様に思います。」
「『思ったより冷たかったです』と言われた方もみえました。」
「『さわった後に彫刻をみたら、さわってなくても質感が分かって感動しました!』『人がさわっているのを見たら自分もさわりたくなった。』と言っていました。」
「手荷物、時計等の説明中に、やっぱり見るだけにします、とさわるのをやめる人が何人かいました。」

担当者より

「今年度は【昨年度の彫刻に触れる展示】の経験を発展させつつ、さまざまな人が収蔵品の柳原義達彫刻に親しみ、鑑賞を深めることができる展示をめざしました。
 今年度の展示のポイントは二点ありましたが、一つは昨年度の反省をもとに、机型の展示台を考案したことです。これは机型の台の前に座って鑑賞することで、よりじっくり触察でき、台や彫刻の転倒が起きにくい状況が生まれることを期待しました。結果として座って鑑賞する来館者は半分以下でしたが、これまでにない長時間触察を行う鑑賞者も見られ、より落ち着いて鑑賞を行える環境になったかと思います。二つ目は作品保存への理解を深めてもらうことで、昨年度と同じく係員の口頭による取り扱いのガイダンスに加え、修復担当学芸員の助言も得つつ、配布リーフレットに彫刻取り扱いの注意点を付しました。これは今回の展示において、スケジュールの関係からゲストを招いての企画が難しかったことも関係しています。係員へのアンケートによれば、取り扱いには協力的な鑑賞者が多かったといい、美術館の保存活動への理解を深めていただくきっかけになれたのではと考えています。」
(髙曽由子) 

「作品を触って鑑賞する展示を再び開催することになり、前回の課題を踏まえて安全に鑑賞するためのガイドラインについて検討を重ねました。普段は、作品に触らないでとお願いしているため、前回の展示では、触察することに戸惑う来館者が多くいました。作品を触りながら鑑賞することは、見るだけでは感じられないブロンズの温度や凹凸感を楽しみ理解を深めることが期待されます。様々な感覚からアプローチすることができる触察は、とても大切な鑑賞方法であると同時に、継続して行うためには『鑑賞者の安全』と『作品保全』が大きな課題となりました。多くの来館者に安心して鑑賞してもらうため、本展企画担当者と事前にガイドラインを作成し、展示室の案内パネルも工夫しました。ブロンズ作品は硬くても大きな衝撃によって傷つく素材であることから、指輪やアクセサリーを外して鑑賞するのが望ましいです。前回は『外すなら触らない』という鑑賞者も多くみられたことから、今回はアプローチしやすくするため、指輪カバーやアームカバーを着用して鑑賞する案を検討しました。触察のために考案した鑑賞アイテムは、作品に優しい素材を選定しました。鑑賞アイテムをはじめ展示室内でのガイダンスによって鑑賞者の安全と作品保全について理解していただけた、との係員の報告を聞き、多くの来館者に触って鑑賞する展示を楽しんでもらえたのではないかと思います。」
(橋本三奈)

椅子について

展示室で用いる椅子の制作については、大阪芸術大学デザイン学科に協力いただいた。木材については、株式会社 J.フロント建装から提供を受け、立ち上がりやすい手かけのある椅子/子ども向けの高い座面の椅子の2脚を用意した。 

「/ chair(スラッシュチェア)」について デザイナーより

「このイスは美術館にある様々な展示作品を楽しむためにデザインしました。
 座って作品を鑑賞した後に立ち上がりやすい、杖のついたスツールをイメージしています。じっくり鑑賞して次の展示作品に向かって立ち上がる動作を、ハンドルから後ろ脚にかけての造形に落とし込みました。
 材料にアフリカンマホガニーを使用することで優しく落ち着いた雰囲気に仕上がりました。ハンドルを握ったときの暖かみを感じていただけると嬉しいです。
 このイスに腰掛けてゆっくり作品と向き合う時間をお楽しみください。」
(大阪芸術大学デザイン学科プロダクトデザインコース デザイン担当:和田樹花 指導:道田健) 

リーフレットについて

リーフレットは、手でさわる展示にあわせ、紙に穴あき加工を施し、さわっても楽しめるものとした。穴が開いた部分から次のページがのぞき、リーフレットのページをめくるごとに作品の見え方が異なるように考案されている。 
リーフレットオンライン版のページ

デザイナーより

「本グラフィックでは、リーフレットのページをめくることで、柳原義達さんの作品である『鳩』の色や形が、解体されていく様子を表現しました。柳原義達さんの作品を、直に触れて鑑賞し初めて、作品の要素を皆さんが楽しんでいただけるようにしました。
 ロゴでは、リーフレット内の触って分かる二重の円を要素に、グラデーションで探るイメージを表現し、目で見る楽しさと手で触る楽しさ、両方に思いを馳せていただけると嬉しいです。」
(デザイナー:桑田知明)

掲載、寄稿

髙曽由子、鈴村麻里子「県立美術館『さわって楽しむ 柳原義達の作品』」『はなしょうぶ(視覚障害者生活情報誌)』212号、2022年11月
鈴村麻里子「誰もが自由でいられる環境を目指して(「ユニバーサル・ミュージアム」な仲間たち11)」『点字毎日』2022年10月20日付

台の上に乗ったブロンズ彫刻を、椅子に座った鑑賞者が触察する様子

展示室全景 受付や、台に乗ったブロンズ彫刻等が捉えられている
展示風景 撮影:松原豊

*目次に戻る
 

3.三重県立四日市高等学校 学校美術館「はじめての美術館」

三重県立美術館の所蔵品を四日市高校の武道場で展示するプログラム。会場に来場する小学生の美術館デビューのために、高校生が作品選定やコメント執筆を行った。美術館は「近くにない」「子ども向けではない」等、【昨年度の調査】でも明らかとなった課題を、高校生と協働して解決する取組。
2020年度の連携事業のページ
2021年度の連携事業のページ

(1)事前授業

①作品選定

日時:2022年12月12日(月)2・3限、20日(火)1~3限 

②コメント執筆

日時:2023年2月6日(月)2・3限、7日(火)2・3限、9日(木)3限

■共通

会場:三重県立四日市高等学校 美術室
参加者数:三重県立四日市高等学校美術Ⅰ選択者105名
担当:森本彩(三重県立四日市高等学校 教諭)、鈴村麻里子、内藤由華、橋本三奈、村上敬
 
12月の授業では、出品候補作品のカードを見ながら、小学生がはじめて出会うのにふさわしい美術作品を、高校生が各自3点選び投票。2月の授業では、小学生が自らすすんで鑑賞を楽しめるよう、高校生がコメントを執筆した。
 
美術室のモニターを、生徒が見ている様子

テーブルの上のカードを見ながら、生徒同士がコメントを検討している様子
2月の授業風景

*目次に戻る
 

(2)展覧会

日時:2023年3月16日(木)10:00~15:30
会場:三重県立四日市高等学校 武道場
主催:美術館のアクセシビリティ向上推進事業実行委員会、三重県立美術館、三重県立四日市高等学校
来場者数:三重県立四日市高等学校1・2年生、四日市市立富田小学校3・4年生、各校教職員・卒業生等325名(うち団体228名、個人97名)
担当:森本彩、村上敬、橋本三奈、鈴村麻里子、内藤由華 *当日の展示撤収作業、来場者対応は全学芸員が担当
 
高校生による投票の結果に基づき、三重県立美術館の所蔵品25点(油彩画、版画、水彩素描、彫刻、日本画)を、武道場に展示。午前中には富田小学校の3・4年生が来館し、作品を鑑賞。鑑賞後には、付箋に感想やコメントを残した。高校生のコメントの一部は作品の隣にパネルとして掲示し、全員分のコメントはリーフレットや美術館ウェブサイトに掲載。
【チラシPDF(620KB)】
高校生のコメント一覧ページ

小学生より(会場のコメント抜粋)

「木のかげや光が自然でまねしてみたいなと思いました。水も自然できれいだなと思いました。」
「道を車で進んでいたら、富士山の真っ白な雪の風景が見えて、びっくりするような感じが伝わってきた。」
「ふしぎな絵や作品がたくさんあって何を表しているのかこんがらがってしまいます。」
「[なにに見えるかな?という問いに対して]わたしはおこっているようにみえました。」
「光のところとくらめのところ 表げんできていてすごい!」

美術Ⅰ選択の高校生より(来場者アンケート抜粋)
質問:小学生が、どんな風に鑑賞する姿を想像して作品を選びましたか?

「楽しそうに、自分の感じたことをそのまま友達や教員たちと共有する姿」
「パッと見てきれいと感じたり、何が描いてあるか分かったりするほうが、よく見てもらえると思って作品を選んだけれど、実際に小学生を見たら、何が描いてあるかよく分からない作品を見て考察していると感じたので、そのような絵を選んでもよかったと思いました」
「小学生が、友達と一緒に目をキラキラさせながら、『○○みたい~!』などと楽しそうに作品を見る様子」
「絵に対して疑問や考えをもって、自分の感想を共有し合う姿を想像した。自分の意見をもって、じっくりといろいろな絵を見てほしいと思った。」

質問:小学生達の作品コメントを読んで感じたことや感想を教えて下さい。

「自分が感じた感想を素直に書いている感じが良かった。びっしり書いている子もいて、たくさん感じることがあったのだな、と思ってうれしかった。」
「抽象的な絵や風景画にはコメントが少なかったが、身近にありそうなものには、多く作品[コメント]があった。」
「絵がどうだった(きれいとかすごいなど)の感想が書かれていると思ったけど、どのような画材で描かれているか注目している人や、この絵がどんなシーンなのかを想像している人もいて、私が思っているよりもさまざまな視点から着目しているのだなと感じました。」

担当者より

「会場で小学生の声を聴き、『博物館には家族と行ったけど、美術館には行ったことがない』、『美術館に絵本の展覧会を見に行ったことはある』など、一様ではないものの、子供たちにとって美術館は身近な存在になり得ていないと感じました。少なくとも、今回展示された近代の油彩画や版画などは、多くの子供たちにとって初めて目にするものであったようです。このような作品は、子供には難しい、あるいは子供の関心の外にあると、私自身を含む大人が無意識にも捉えてしまっていたのかもしれません。作品とコメントパネルを交互に見つめる姿や、コメントパネルをヒントに友達と会話をしている様子からは、作品を難しいものと捉えているようには見受けられませんでした。」
(村上敬)

「『学校の武道場が美術館になるってどんな感じなのだろう』。出張授業の中で、生徒たちの想像を膨らませながらコメント執筆をしていた姿が印象的でした。少し緊張しながらいざ会場に入った高校生は、見慣れた武道場に絵画や彫刻が展示されている姿を目にして驚きを隠せない表情でした。小学生が来場した時は、とても賑やかな会場となり、作品の前でお友達と話をしながら目を輝かせる姿を見ることができました。美術館ではない場所に展示する、ということは私の中でも初めてのことでしたが、学校美術館を無事に終えることができたのもマナーを理解して鑑賞してくれた来場者の皆様のおかげです。この展示を機に、三重県立美術館を訪れてもらえたら嬉しいです。」
(橋本三奈)

主なメディア掲載、寄稿

「四日市市の高校で県立美術館の所蔵作品の出張展示会」(NHKニュース内)2023年3月16日
篠崎美香「四日市高が『美術館』に 県所蔵25点展示 富田小児童ら鑑賞」『中日新聞』(北勢版)2023年3月17日付
「県美術館所蔵品高校に出張展示」『読売新聞』(三重版)2023年3月17日付
鈴村麻里子「学校を美術館に――三重県立美術館における『学校美術館』の取組」『美術による学び研究会メールマガジン』465号、2023年3月19日、1~5頁

武道場全景 屛風や彫刻、パネルに掛けられた絵画が見える

会場の一隅 赤いパネルに展示された風景画を生徒二人が鑑賞する様子
会場風景 撮影:松原豊

*目次に戻る
 

4.視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ

日時:2023年①3月5日(日)②12日(日)14:00~16:30
ナビゲーター:①林建太、浦野盛光②林建太、浦野盛光、平海依(「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」メンバー)
開催方法:オンライン会議システムZoomによる開催
参加者数:5日8名、12日8名
担当:鈴村麻里子、坂本龍太、藤田響              
 
2021年度に「美術にアクセス!――多感覚鑑賞のすすめ」展の関連プログラムとして開催し、応募多数で好評を博したプログラムを再度開催。コレクションの名品から三重ゆかりの作家による作品を選び、目の見える人、見えない人、さまざまな見方を持った人が、見えることや感じることを言葉にしながらオンラインで鑑賞した。
開催案内ページ
2021年度の事業報告ページ

参加者より(アンケート抜粋)

「障害にしろ何にしろ、全体のイメージではなく個々を知って接することの大切さを改めて感じた気がします。」
「印象は瞬間的にとらえられるが、どうしてそうなのかを考えるのはなかなかに時間がかかることがわかりました。すぐにわからないのはもやもやするけど、そこが刺激的でもありました。」
「言葉に対する印象は人それぞれ。共通認識と思っていても、実は差異があることを、日頃から感じていますが、今回も再認識しました。」
「視覚をどう伝えるか考えながら話す事で、丁寧に伝え、隅々までみる、相手にどう伝えるかを考えるのはコミュニケーションの大切な要素であると気付きました。」
「オンラインの鑑賞会は美術館と同じ程度の成果を感じました。絵画でしたら事前に立体コピーがあるといいですね。」
「ワークショップが進むにつれ、個人的な印象や主観的な話ができるようになり、他の参加者のお話から影響を受け対話が発展していったことはワークショップならではの経験だと感じました。」

*目次に戻る
 

5.情報保障付き講演会

(1)連続レクチャー「絵を読む悦び――三重のコレクションに見る近代」

日時:2022年11月23日(水・祝)14:00~15:00
講師:速水豊(三重県立美術館 館長)
手話通訳:岡田敦子、西尾恵子(三重県より派遣)
要約筆記:太田佐恵子、加藤等、坂下浩、中谷夏陽(三重県より派遣)
参加者数:35名

(2)連続レクチャー「スペイン美術いまむかし」

日時:2022年12月3日(土)14:00~15:00
講師:坂本龍太(三重県立美術館 学芸員)
手話通訳:岡田敦子、藤澤香津子(三重県より派遣)
要約筆記:裏川千晶、坂下浩、中谷夏陽(三重県より派遣)
参加者数:40名

■共通

会場:三重県立美術館 講堂
担当:田中ひろみ(三重県子ども・福祉部障がい福祉課 手話通訳支援員)、鈴村麻里子、坂本龍太
 
参加者のリクエストに応じて情報保障をするのではなく、当初より「手話通訳・要約筆記付き」で計画した講演会。これまでアプローチできていなかった耳の聞こえない/聞こえにくい人を主な対象とした取組。作品画像を投影するスクリーンの横で、手話通訳とパソコンによる要約筆記が行われた。

参加者より(アンケート抜粋)

「[要約筆記に関して]ききのがしたことも目で追うことができ、耳のきこえにかかわらず、多くの人に有用と感じます。」
「文字をみて理解できる部分が多かった。」

講堂での講演会の様子 中央のスクリーンには作品画像が投影され、その右手で手話通訳が行われている。通訳者の右には要約筆記の文字を映すスクリーンが設置される。
実施風景

*目次に戻る
 

6.コレクション オーディオガイド

公開日:2023年3月30日(木)
掲載先:三重県立美術館ウェブサイト
ガイド数:計30本
担当:道田美貴、鈴村麻里子 *原稿は全学芸員が執筆
 
2020年度に所蔵品5作品につき2本ずつ公開した音声ガイドの追加制作。今年度は作品の制作背景や作者等について説明したA解説20本と、主に目の見えにくい人の利用を想定したB解説(言葉による記述)10本を制作し公開した。
オーディオガイドのページ

*目次に戻る
 

実行委員会構成

三重県立美術館(中核館) 
公益財団法人三重県文化振興事業団 
三重県子ども・福祉部障がい福祉課 
三重県立美術館ボランティア「欅の会」

*目次に戻る
 

謝辞

令和4年度の事業を実施するにあたり多大なご協力をいただいた関係諸機関、関係者の方々、およびここにお名前を記すことを控えさせていただいた方々に深く感謝の意を表します。(五十音順、敬称略)

NPO法人 赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会
愛媛県美術館 
大阪芸術大学デザイン学科 
株式会社J.フロント建装 
視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ 
平塚市美術館 
三重県視覚障害者支援センター 
三重県聴覚障害者支援センター
三重県立みえこどもの城
三重県立四日市高等学校 
四日市市立富田小学校

小田久美子 
桑田知明 
小阪圭一 
谷澤陽佑 
冨田めぐみ 
中村千恵 
松原豊 
道田健 
和田樹花 

*目次に戻る
 

奥付

令和4年度「美術館のアクセシビリティ向上推進事業」報告リーフレット
[印刷版]執筆・編集:鈴村麻里子、坂本龍太(三重県立美術館学芸普及課)
[オンライン版]執筆・編集:鈴村麻里子、髙曽由子、原舞子(同)
[印刷版]デザイン:溝田尚子
[印刷版]印刷:株式会社アイブレーン
発行:美術館のアクセシビリティ向上推進事業実行委員会(三重県立美術館内)
〒514-0007 三重県津市大谷町11番地 
TEL. 059-227-2100 / FAX. 059-223-0570
発行日:2023年3月24日 *オンライン版は随時更新
©2022美術館のアクセシビリティ向上推進事業実行委員会 
無断転載・複製を禁じます。
 
令和4年度 文化庁 Innovate MUSEUM事業
▼事業のページ(外部サイト)
http://innovatemuseum.bunka.go.jp/

*目次に戻る

ページID:000271527