「美術にアクセス!」展音声解説21 第2章 約2分40秒
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【以下、読み上げ原稿です。】
第2章 美術と感覚
第1章では、複数の感覚を活用する鑑賞を提案しました。そうはいっても、美術館には作品を保存するという使命があり、表面を傷つける可能性のある触覚、虫などを誘いこむ可能性がある味覚や嗅覚を、展示室内で活用できる機会はほとんどありません。
しかし、「黄色い声」や「甘い香り」というたとえにあるように、私たちには、実際に使わない感覚を借りて表現することもできます。また、特定の色に音を感じたり、音に触覚を感じたりする人たちもいます。そのような自動的に別の感覚が引き起こされる特性のことを「共感覚」と呼びます。共感覚は、多くの人に備わる特性ではありませんが、この展示室では、想像力を使って、「共感覚的に」さまざまな感覚を結び付けてみる鑑賞を提案します。
聴覚-美術に音を聞く
最初に、音や聴覚に関わりの深い作品を紹介します。
《発掘した言葉》は向井良吉による彫刻作品です。「発掘した声」とも呼ばれていたこの作品について作者は、「音響感を造形としてとりあげた」と言っています。当初作家が思い描いていたのは「きらきらと黄金色に輝く、福音ともいえる天の声であり地の声」。作品からどのような「声」が感じられるでしょうか。
《発掘した言葉》の隣には、駒井哲郎の銅版画《束の間の幻影》を展示しています。「束の間の幻影」というタイトルは、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフのピアノ曲からとられたものです。作者は、この楽曲と作品の造形の間に関係はないと言っていますが、この作品を制作した当時、ラジオで音楽を聴く日々を送っていました。駒井は、自分の作りたい作品は、スラブ音楽のような人間的なアクセントのある作品だとも書いています。