このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

美術館 > 展覧会のご案内 > 常設展(美術館のコレクション) > 2020 > 美術館のコレクション  作品リスト

美術館のコレクション(2020年度常設展示第2期第3室)短い解説文

2020年6月30日(火)-9月22日(火・祝)
このページには常設展示室第3室「滋賀県立近代美術館と三重県立美術館の西洋美術コレクションから」の出品作品解説(展示室にも掲出している短い解説文)を掲載しています。
長い解説文はこちら
出品作品リストはこちら
 
クロード・モネ《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》
セーヌ川沿いの村アルジャントゥイユ(フランス)の船着き場の夕ぐれを描いた風景。あらいタッチで描かれた金色の夕日が水面にきらきらと反射しています。右下に見えるのはボート貸し小屋。画面中央より少し下に描かれた屋根付きボートは、モネ自身が水上での制作のために使用していた特別な船「アトリエ船」です。
 
クロード・モネ《ラ・ロシュブロンドの村(夕暮れの印象)》
画家モネが風景を気に入った旅先で制作に取り組んだ夕景。
逆光のため暗い色に染まった丘が視界をさえぎり、丘の向こうに夕日が沈んでいきます。モネは丘を黒ではなく、赤と緑の絵具をとなり合わせに塗ることで暗い色調を表現しました。画面に目をこらせば、風に揺れる木や丘の上に建つ家を見つけることができます。
 
ピエール・ボナール《ヴェルノンのセーヌ川》
画家ボナールが、自分の別荘の裏庭付近から川の向こう岸を見て描いた風景。画面を横切るセーヌ川を、タグボート(小型の船をひくボート)が煙を上げながら進んでいます。全体にやわらかなもやがかったような画面には、オレンジやグレーがかった青、黒などのユニークな色が要所要所に配置されています。
 
ラウル・デュフィ《黒い貨物船と虹》
描かれているのは、画家デュフィの故郷に近いサン=タドレス(フランス)の入江。画面の大部分が黒色の絵具でおおわれ、中央に見える貨物船の輪郭は黒い絵具の層をひっかいて表されています。画面左手では雨がふり、右手の空には虹がかかります。この絵を描いた頃、デュフィは黒を光の色として用いるために試行錯誤していました。
 
ジョルジュ・ルオー《キリスト磔刑》
イエス・キリストが磔にされ処刑される場面。画面いっぱいに描かれた十字架の上でキリストが両手を広げ、その左右には聖母マリアや弟子たちの姿が見えます。黒々とした太い輪郭線が、クリーム色や黄色の鮮やかさを際立たせています。作者のルオーは「信仰の画家」として知られ、キリスト教にまつわる絵画を数多く残しました。
 
パブロ・ピカソ《ロマの女》
海沿いの道の脇で、スカーフをまとった女性が膝を抱えています。女性の腕の中にいるのは赤ん坊でしょうか。背景はバルセロナ(スペイン)の海岸。空や海が色鮮やかに描かれていますが、女性の表情はどこかかなしげです。タイトルにある「ロマ」とはインド方面からヨーロッパに移住した人々。ピカソが10代の終わりに描いた作品です。
 
ジョアン・ミロ《女と鳥》
黒く太い線で描かれたユーモラスなかたちが画面に踊っています。画家本人がキャンバスの裏面に書いたタイトル「女と鳥」から想像すれば、左下に描かれるのが「女」の胴体、その周囲を舞っているのが「鳥」でしょうか。赤や黄、オレンジ、緑、青の絵具が画面を鮮やかに彩っています。

サルバドール・ダリ《パッラーディオのタリア柱廊》
おおまかなタッチで描かれた人物が左右にずらりと並んでいます。手前の人物を大きく、奥の人物を小さく描き、その差を大きくすることによって、見る人の視線が画面のなかに引き込まれるような効果が生まれています。人物の行列を抜けた先には光の射す空間が描かれ、なわとびをする女性の姿が確認できます。
  
アントニ・タピエス《ひび割れた黒と白い十字》
左上の十字やその上に走る線は、厚みのある黒い絵具の層をえぐり取るようにして表されたものです。えぐられた跡には下の板がのぞいています。黒い面の大部分をおおうのは、表面からはじかれたような斑点。画面の端は、激しくひび割れています。絵画表面の「描かれたもの」ではなく、材料そのものの存在を強く感じられる作品。

マルク・シャガール《枝》
透明度の高い青色を背景に、女性と男性がななめに浮かんでいます。二人の上に生い茂るのは、花咲く枝。色合いや濃淡の多様な青を用いた背景には、画家シャガールの生まれ故郷ロシアを連想させる家畜や、活動拠点としたパリの街なみ(エッフェル塔など)、宙を舞う人、花束が非現実的な配置で描かれています。 
       
パブロ・ピカソ『聖マトレル』挿絵
ピカソが詩人マックス・ジャコブの著作『聖マトレル』のために制作した挿絵。恋人レオニーに振り回された貧しい青年マトレルが、人生に悩んだ末、修道院で神の啓示を受けて、生涯を終えるという話。文章の内容を説明しない自由で実験的な描き方によって、読者の想像力を強くかきたてる作品です。
 
パブロ・ピカソ《レオニー嬢》
マックス・ジャコブ著『聖マトレル』の挿絵。
対象をさまざまな角度から分解し、短い線や小さな三角形や四角形などで組み立て直す方法(「分析的キュビスム」)が用いられています。輪郭や骨格を表す線と、陰影のような効果を生んでいる短い線の集まりでもって、長い首を持つレオニーの身体が表現されています。
 
パブロ・ピカソ《テーブル》
『聖マトレル』第一章に登場する「至極整頓された食堂」の場面を表したもの。
ひきだしの鍵穴に差しこまれている鍵、テーブルの輪郭や脚、脚(ステム)の付いたグラスなどを見出すことができるでしょうか。多くの線が重ねられた右奥の空間は、ひときわ暗く奥行きが感じられます。
 
パブロ・ピカソ《長椅子のレオニー嬢》
『聖マトレル』の挿絵。
長椅子に座る女性を斜め横から捉えています。『聖マトレル』の挿絵として最初に登場する「レオニー嬢」と女性の身体のつくりはよく似ていますが、この挿絵のぺージ付近の文章に、レオニーが椅子に座るという描写はありません。関節の曲がった身体や斜めからの視点が構図をいちだんと複雑なものにしています。
 
パブロ・ピカソ《僧院》
『聖マトレル』の挿絵。
マトレルが生涯を閉じる修道院が描かれています。本書の企画者・編集者は、これは壁に囲まれた修道院の庭であり、庭のヤシの木と噴水、二階部分のロッジャ(外に開いた屋根付き廊下)、教会とその鐘が描かれている、と説明しています。ピカソが以前訪れたバルセロナの修道院から着想を得たと言われています。
 
ジョルジュ・ブラック《静物Ⅰ》
「静物」とは静止して動かないもののこと。例えば、花、果物、食品、食器、楽器など。ブラックはこの版画が制作された時期、ピカソとともに描かれる対象を分解して再構成する実験をくり返しています。この作品では個々の線が何を表しているのか簡単には分かりませんが、テーブル上の静物を縦長の画面に配置する構図は、当時ブラックがよく採用していたものです。
 
カジミール・マレーヴィチ《飛行機と鉄道によるひとりの人間の同時的な死》
ロシアの詩人アレクセイ・クルチョーヌィフの詩集『爆』に挿入された版画。飛行機の車輪が左手に見え、その下には電線と電柱、あるいは線路と枕木のようなものが確認できます。機械のスピード、エネルギーが、画面を走る何本もの線によって強調され、飛行機が線路の上に墜落する瞬間がダイナミックに表現されています。
 
カジミール・マレーヴィチ《祈り》
ロシアの詩人アレクセイ・クルチョーヌィフの詩集『爆』に挿入された版画。文章の「ぼくは祈るだろう」という部分に対応するイメージと考えられます。ひざまずき祈りをささげる人物でしょうか。ピカソの描くエッチングのレオニー嬢が短い線の集合によって表されていたのに対し、このリトグラフでは線というより面でもって人体が表されています。

最終更新:2020年7月2日
ページID:000239932