表紙の作品解説
KATAGAMI Style展―世界が恋した日本のデザイン―
世界で最初に産業革命を達成し、万国博覧会でその偉業を誇示したイギリスは、世界で最初に型紙を大量に輸入した国としても名を残すだろう。ロンドンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館には、1870年代に型紙を受け入れたという記録があり、1890年代にはピークを迎えていた。
この型紙は、現在リバティ・プリントが人気のリバティ社が所蔵していた型紙の一枚。縞模様に隠れるように梅の花が裏側からとらえられている。この意匠を面白いととったリバティ社は、自らの商品の見本を着想し、泡のように愛らしい花が淡いピンクの帯に浮かんでは消える様をデザイン化した。
しかしながら、この2枚を見て気づくのは、類似点よりもむしろ相違点ではないだろうか。型紙が持っていた、白(彫りぬかれたところ)と黒(彫り残されたところ)の強いコントラストはリバティ社にはなく、繊細さが前面に出てきている。ここに日本とイギリスの文様に対する態度の違いが表れている。非常に興味深い例として、展覧会を象徴する作品となっている。
(学芸員 生田ゆき 友の会だより no.91 2012.8)