企画展 子ども美術館 Part8
「かわいいってなんだろう?」
2012年7月18日(水)~8月19日(日)
たかが「かわいい」、されど「かわいい」―大人のための「子ども美術館」の楽しみ方
「かわいい」と聞けば、どのようなものが真っ先に思い浮かぶでしょうか。あどけない子どもから、ちょこまか動き回る子犬や子猫、アニメや漫画のキャラクターにいたるまで、「かわいい」と言われるものには、今日あらゆるところで出会うことができます。
けれどもいざ翻って美術作品に目を向けたとき、「かわいい」という言葉で表せるものは、いったいどの程度あるでしょうか。どちらかといえば、技の巧みさや構図の妙、色彩の美しさを追究することの多い「美術」という領域において、「かわいい」が、作品の質を評価する言葉として積極的に用いられる機会は決して多くありません。このことは、「かわいい」の、賛辞である一方で、主体と客体の上下関係をも示唆しうるという複雑な性格に起因すると言えるでしょうか。
しかし、それでもやはり「かわいい」作品には人をひきつける魅力があります。その魅力は決して作品の質と相反するものではありません。質が高くかつ「かわいい」。そんな作品があったら、最強だと思いませんか。
今回の展覧会では、そんな「最強」の魅力を備えた当館所蔵品を、企画展示室第4室にてご紹介します。作品の、これまで脚光を浴びることのなかった魅力を、堂々と再発見できる絶好の機会となるに違いありません。そして、「かわいい」の感じ方は本当に人それぞれ。本展の醍醐味は、ずばり、「自分と他人の考え方の違いを知ること」でしょう。数人で連れ立ってご観覧いただき、各自の好みやセンスについて心ゆくまで語り合っていただければ幸いです。
(学芸員 鈴村麻里子 友の会だより no.90 2012.8)