常設展のみどころ〈その3〉
2011年第3期常設展示 特集展示
追悼 元永定正
皆様もすでにご存じのとおり、去る10月3日の夜、病気療養中であった元永定正さんが88歳でご逝去なさいました。第3期常設展示は、急遽予定を変更し、[特集展示:追悼 元永定正]を開催しています。
三重県伊賀出身の元永さんは、1950年代に始まる抽象絵画や立体、パフォーマンスなど、幅広く、独創的な活動を重ね、国内はもちろんのこと、海外でも高い評価を受けてきました。三重県立美術館でも、開館以来、元永さんの作品を収集し、1991年、2009年の2度にわたり個展を開催しています。美術館全体が元永芸術に包みこまれ、小さなこどもから年齢を重ねた方まで、三重県立美術館を訪れたすべての方々が笑顔で美術館を後にした、2009年の展覧会は記憶に新しいところです。エントランスでおこなわれたアーティストトークやパフォーマンスで、元永さんの魅力的なお人柄に触れた方も多いのではないでしょうか。
このたびの特集展示では、1950年代、元永定正さんが初めて抽象画を描き始めた時期の作品に始まり、60年前後からの絵具流しによる大作、ニューヨーク滞在中(1966年)に始まるユーモラスな雰囲気漂う絵画、1990年代以降の絵具流しと「かたち」とを組み合わせた作品など約25点で元永さんの芸術世界を振り返ります。ぜひこの機会に、元永さんを偲びつつ、本展をご鑑賞いただければと思います。
最後になりましたが、元永定正さんがご生前三重県立美術館にお寄せくださった数々のご支援に心からの謝意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。
(学芸員 道田美貴 友の会だより no.88 2011.11)