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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2011 > 表紙の作品解説 イケムラレイコ《黒の中に青いミコと》 イケムラレイコ うつりゆくもの 原舞子 友の会だより88 2011.11

表紙の作品解説

イケムラレイコ(1951~  )
《黒の中に青いミコと》

1997年
油彩、キャンバス
80×80㎝
栃木県立美術館蔵

 暗闇にぽつんとたたずむ少女。少女は青い猫を腕にかかえています。タイトルにあるように、どうやらこの猫の名前は「ミコ」というようです。少女も猫も、顔立ちはぼやかされて表情を読み取ることはできませんが、真っ黒な闇の中でも一緒にいれば寂しくない、とでも言いたげに見えてきます。

 実はこのミコというのは、イケムラレイコが飼っていた猫の名前なのです。イケムラの作品には、「ミコ」という名前が登場する彫刻や絵画が他にいくつも見られます。

 ではなぜミコなのでしょう?作家に聞いたところ、どうやらミコは「巫女」からきているらしいのです。神に仕え、神託を告げる者。何かに突き動かされ、何かを代弁する者。でも本当はイケムラレイコという作家自身が、巫女のような存在であるのかもしれません。

 イケムラはよく、作品を制作することを「仕事をする」と表現します。そこには自身を通して、自然と人間、動物や植物の世界の間に存在する絶対的な何ものかを作品として形作っていこうとする姿勢が見え隠れしているようです。

(学芸員 原舞子 友の会だより no.88 2011.11)

 

友の会だより文集抄

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