福田繁雄(1932-2009)
《SHIGEO FUKUDA IN ASPEN》
1976年
シルクスクリーン
103×72.8cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda
© Photo DNP Foundation for Cultural Promotion
cat.no.94
福田繁雄のポスターでは、ほとんどの場合色彩は平坦なひろがりとして配される。そうすることで、色彩の発言力が最大限に活かされるわけだ。
そんな中で本作品は、紗をかけたようなニュアンスを帯びたグレーがひろがっており、例外的な作例と見なすことができよう。「グレーの部分はトレーシング・ペーパーの裏側から黒で刷り、下の文字の一部を表から黒で刷った」(1)のだという。
他方、イメージの構成は、福田らしく、不要な要素をそぎ落とした直截さをしめしている。「人間の心の動き」(2)を表現できるイメージとして、福田はしばしば手を描いたが、ここでは、画面中央の縦軸上に開いた二つの穴から、二つの手が差しだされている。
手と手の間に開く距離は、それがいつか埋められるのかどうか、はっきりした答えを出してくれない。グレーのニュアンスは、こうした曖昧さに呼応しているのだろう。
(石崎勝基)
1.『福田繁雄 標本箱』、美術出版社、1978、p.28
2.『アイデア別冊’91・11月号 FUKUDA 福田繁雄偉作集』、誠文堂新光社、1991、p.36。
2011年9月4日