福田繁雄(1932-2009)
《伝統と現代技術-日本のグラフィックデザイナー12人展》
1984年
オフセット
103×72.8cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda
Photo courtesy of Shizuko Fukuda
cat.no.110
ダックスフントは胴が長い。というわけで本作品でも、頭の部分から伸びていく胴を目で追っていくと、くるりときれいな円を描いてまわりこむ。漫画的な誇張なのだろうと納得してお尻にたどりつくのだが、ふと気づけば、頭とお尻の関係がおかしい。背中の曲線であったはずの円が、いつの間にかお腹になっている。ここにもまた、平面上でしか成立しないトリックが仕掛けられていたわけだ。
福田にはダックスフントを扱った作品が他にも何点かある。ある時ダックスフントを描いていたところ、胴が長すぎたので、はさみで切って、少しずらしてつなぐと、不思議なイメージが生まれたのだという*。
また、上部で三箇所、文字が斜めに配され、円に動きを与える。黒地を抜いた文字や犬の色は、軽快であると同時に豪奢な感触をもたらしている。
(石崎勝基)
中日新聞2011年8月21日
* 『タイムトンネルシリーズ Vol.27 福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』(ガーディアン・ガーデン、クリエイションギャラリーG8、2008 )、p.47。