福田繁雄(1932-2009)
《A CUP OF WATER》
1974年
オフセット101.6×71.3cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda
© Photo DNP Foundation for Cultural Promotion
cat.no.69
機能主義に対抗するかのように、遊びの要素や錯覚によるトリックを福田は重視した。しかしそれらを徹底して単純化し整理する彼のデザインは、機能主義と同根のモダニズムを厳格なまでに追求したもの、と見なすこともできるかもしれない。
本作品はそうした姿勢を極限まで押し進めたものだ。ニュアンスを排した藍色がひろがる中、リングと下端の文字のみが白く抜かれている。
この作品は「自然の脅威をテーマにした公共ポスター」で、「コップ一杯の水で人を助けることができるが、コップ一杯の水も沢山集まると洪水となって人を溺死させる」と福田は記している*。
そうした意図を知らなくとも、藍色が一切を浸していくさまには、徹底した単純化ゆえにかえって、ある種の瞑想性すら感じられるのではないだろうか。
(石崎勝基)
中日新聞2011年8月14日
* 『福田繁雄 標本箱』、美術出版社、1978、p.82