福田繁雄(1932-2009)
《SHIGEO FUKUDA展》
1975年
シルクスクリーン
103.0×72.8cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda © Photo DNP Foundation for Cultural Promotion
cat.no.79
びよ~んとでも擬音をあてたくなる風情で、黒い弧が白い画面に伸びている。びよ~んと伸びる、それは線を引くでも筆で書くでもなく、いわんや刻みつけるでもない。伸び縮みするだけの柔軟さや弾力が、そこには宿っているのだ。
弧の両端は、それぞれ、男性らしき足と女性らしき足に転じている。離れているけれどつながっている、つながっているけれど離れているそのさまに、男女の関係について思いをはせることもできるかもしれない。
しかしそこに答えはなく、それでいて答えがないからこそ、何度でも問いかけを許容するイメージが、ここには成立している。そのために、白と黒以外の色を排し、しかも弧のイメージ以外では、上下の端にのみ文字の黒を配するという、厳格な構成が選ばれたのだ。
ただしこの厳格さは、白のひろがりに息をつかせるだけの軽快さと一体化している点を、忘れないでおこう。
(石崎勝基)
中日新聞2011年7月10日