福田繁雄(1932-2009)
《VICTORY 1945》
1975年 オフセット
97.0×67.0cm
DNP文化振興財団所蔵
© Shigeo Fukuda © Photo DNP Foundation for Cultural Promotion
cat.no.80
この作品は、一九七五年ワルシャワで開催されたポーランド戦勝三〇周年記念国際ポスター・コンペに出品され、最高賞を獲得した。これが福田繁雄の国際的声望を確立することになる。
当初福田は、第二次世界大戦の資料を集め、アイデアを練ったが、満足できるものに行き当たらなかった。少し時間をおいてあらためて資料を開いた時、爆撃機が爆弾を投下している写真が、逆さになった状態で目に飛びこんだ。まるで爆弾が爆撃機に吸いこまれるかのように見えたという*。
この時の印象を活かすために福田は、色と形の徹底した単純化を遂行した。あざやかな明るい黄色が一面にひろがる中、対角線上に、黒だけの形が二つ、向かいあっている。
構成の明快さによって注意を引きつけた上で、あらためて画面を眺めれば、砲弾は砲口に飛びこもうとしている。こんなことは現実にはまず起こるまい。しかしだからこそ、見る者は、これは一体いかなる事態なのかと、頭をひねらずにはいられまい。
視覚に訴えるための二段階からなる仕掛け。それを福田は、徹底した単純化によって実現したのだ。
(石崎勝基)
読売新聞2011年7月12日
*『タイムトンネルシリーズ Vol.27 福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』(ガーディアン・ガーデン、クリエイションギャラリーG8、2008 )、pp.34-35など参照。なお、そこでは逆さで見た爆撃機の資料はスケッチとされている。平野敦子編、『グラフィックデザイナーの肖像』、新潮社、2009、第5章「福田繁雄 2005年4月21日」(インタビュアー:タナカノリユキ)、p.180では写真とされる。