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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2011 > 堀文子展~華々しい収穫のとき~ 道田美貴 友の会だより86 2011.4

友の会だより文集抄

堀文子展~華々しい収穫のとき~

2011年4月9日(土)から5月29日(日)まで開催

道田美貴

 今春開催の〔堀文子展〕を、心待ちにしてくださっている会員のみなさまも多いことと思います。自然の美しさや生命の神秘を描き続ける日本画家・堀文子。みなさんが楽しみにしておられるのは、どのような作品でしょうか。今号の表紙に掲載したようなミジンコの絵?色とりどりの華麗な花々?それとも、「徹子の部屋」を飾る《アフガンの王女》?美しい色彩で描き出された絵本の原画?旧来の日本画とは一線を画す知的でありながら力強い作品の数々・・?雑誌『サライ』を愛読しておられる方ならば、同誌に掲載されている「命といふもの」の原画かもしれません。おそらく、この春、三重県立美術館の展示室で、ご期待通りの堀文子作品をお楽しみいただけることと思います。そして一方で、未知の堀文子作品に出会い、新たな堀文子の芸術世界を発見していただけることでしょう。

 大正7(1918)年、東京麹町生まれの堀文子は、女子美術専門学校(現・女子美術大学)在学中、新美術人協会展に初入選。第二次大戦後も、創造美術、新制作協会、創画会と革新的なグループで活躍を重ねました。1961年には、エジプト、ヨーロッパ、アメリカ、メキシコなどを単身で巡り、異国の文化を探求します。3年に及ぶこの旅は、異国を主題とした斬新な作品を生む一方で、堀文子が日本画と向き合い、画家として再出発を果たす契機ともなりました。その後、49歳の時に東京から神奈川県大磯町に転居し、12年後には軽井沢にアトリエを構えて、大磯と行き来する生活を始めます。さらに69歳で単身イタリア・アレッツォ郊外にアトリエを構え、5年間にわたり日伊を行き来して、豊かな自然に取材した作品を描きました。

 自身の感動に根ざした独自の表現と新しいモチーフを常に求めて、堀は80歳を越えても中南米やネパールなどへ取材旅行を行い、異境の風景などに取材した作品を発表します。80歳代半ば以降には、顕微鏡下の微生物、中国古代の甲骨文字など、神秘的な自然世界と不可思議な歴史世界からインスピレーションを得た作品で新境地を開き、90歳を越えた現在も、飽くことなく創造を追究し続けています。

 今回の展覧会では、多様な関心を示す近作、昨年発表された最新作、これまで紹介されることのなかった未公開作品、雑誌・絵本の原画やデッサンなどを幅広く展示し、多面的な堀文子の芸術世界に迫ります。どうぞ、この機会をお見逃しなく。

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