浮世絵・夢と情報をのせたメディア展
―かめやま美術館所蔵[東海道五拾三次]を中心に―を振り返って 三重県立美術館初の浮世絵展となった〈浮世絵・夢と情報をのせたメディア展〉は、浮世絵版画のなかでも、とくに[東海道五拾三次]シリーズを中心に構成しました。これは、本展主催者でもあったかめやま美術館のコレクションが街道物を中心としていること、また、三重県内に、亀山はもちろん、桑名、四日市、庄野、石薬師、関、阪之下と7つもの宿場があったことに拠ります。 三重県立美術館初の浮世絵展となった〈浮世絵・夢と情報をのせたメディア展〉は、浮世絵版画のなかでも、とくに[東海道五拾三次]シリーズを中心に構成しました。これは、本展主催者でもあったかめやま美術館のコレクションが街道物を中心としていること、また、三重県内に、亀山はもちろん、桑名、四日市、庄野、石薬師、関、阪之下と7つもの宿場があったことに拠ります。 浮世絵は、「夢と情報をのせたメディア」というタイトルのとおり、刊行された江戸時代においては、「美術作品」という以上に、メディアとしての役割を多く担っていました。しかしながら、浮世、つまり現実の世界に主題を求めた浮世絵が庶民に届けていたものが、実用的な情報に止まらないということも、今回の出品作品は雄弁に物語っていたように思います。作り手たちによる演出や脚色、構図、彩色等表現上の創意工夫により、浮世絵は、みるものに夢や楽しみを与え、同時に造形的魅力をも獲得したといえるでしょう。 ところで、夏休みと重なっていた本展の会期中には、企画展示室の外でも、浮世絵展を楽しんでいただくためのさまざまな催しがありました。県民ギャラリーで開催された【夏休み子どもひろば】では、制作工程をわかりやすく示した造作物や、《名所江戸百景 浅草金龍寺》の版木(復刻版 かめやま美術館所蔵)の展示を通して、実際の作品だけでは理解し難い、浮世絵の技術的側面へのアプローチが試みられました(展示協力:かめやま美術館/JAMM研究会)。同時に、館内各所にスタンプを設置、それらすべてを押すと3色の版画が完成するというスタンプラリーや、「はん?はんこ?はんが?」と題した、ワークショップがおこなわれました。版画を意識したこれらの作品づくりを体験してもらうことで、子どもたちに浮世絵への関心を高めてもらうことができたようです。一般の方に向けては、会期中の土日に友の会主催のお茶会が開かれ、また、レストラン、ミュゼ・ボンヴィヴァンでは、東海道五拾三次]にちなんだオリジナルメニューが考案されました。いずれも展覧会に負けないほどの人気を博していましたが、これらのイベントと展覧会をあわせて楽しんでいただくことで、浮世絵展はより印象深いものとなったのではないでしょうか。(Mm) |
![]() 浮世絵展展示風景 |
※この記事は2007年10月16日発行「Hill Wind 16」に掲載されたものです。