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美術館 > 刊行物 > その他 > その他(報告書など) > 3-5. レアリスム 20世紀後半のスペイン美術とバレンシアの作家たちをめぐる覚書 石崎勝基


5. レアリスム

いわゆる前衛美術の系譜におさまりきらないブロックに、アントニオ・ロペス・ガルシア(1936- )(1)(fig.31)らによるレアリスムがあり、日本でも紹介されている(2)。現代の都市生活者の空虚な感情をくすんだ調子の内にひたし、時にシュルレアリスム風の幻想を交えつつ描きだすこれらの活動を、現在におけるジュスト・ミリュー/折衷派と見なすかどうかは、各人にゆだねることにしたい。


また、上のグループとは別に、これも範疇分けしがたい活動を展開している作家として、バレンシアのヘノベス(1930- )(3)(fig.32)がいる。彼の主題は、上記のポップ・アートとは別の形での権力批判だ。初期にグルーポ・パルパリョーにも参加していた彼の作風は基本的にはレアリスムによっているが、その代表的な作品では、狙撃手の銃口をとおして見える群衆を匿名の記号として描くことで、全体主義に対するプロテストとして作品を呈示する。


1. cf. Michael Brenson etc., Antonio López García, Lerner & Lerner, 1989.

fig.31 ロペス・ガルシア『アトーチャ』1964

2. 『スペイン美術はいま - マドリード・リアリズムの輝き』展図録、東京日本橋高島屋ほか、1991。

3. cf. Catalogue of the exposition Genovés, IVAM, 1992. また、坂崎乙郎、『幻想芸術の世界』、講談社、1969、p.92-95。

fig.32 ヘノベス『1,2,7,7』1968

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