4. ポップ・アート
アンフォルメルに続く戦後スペイン美術の大きなかたまりとしては、ポップ・アートをあげることができるだろう。そこで代表格となるのは、アルローヨ(1937- )(『100の絵画』no.60-61)(1)とエキーポ・クロニカ(1964-1981)(『100の絵画』no.64-66)である。スペインのポップ・アートは明快な諷刺性を感じさせるものが多く、社会的な意識の強さを読みとらせずにいない。 アルローヨ(fig.27)はしばしば黒を用いた、平坦な色面によって、ハードボイルド映画の一場面を連想させ、またアイロニーを感じさせる都会の情景を描いた。 対照的にきわめて辛口のポップ・アートを残したのが、エキーポ・クロニカ(fig.28)である。このグループはバレンシアで、ラファエル・ソルベス(1940-1981)とマノロ・バルデス(1942- )らによって結成された。先に記したようにスペインのポップ・アートはもともと諷刺色が濃いが、アルローヨに比べても、グレーを基調に、美術史的なモティーフをパロディー化し、ハイ・カルチャーとロウ・カルチャーをごったにするこのグループの作品は、より冷たく厳しい感触を与えずにはいない。 ソルベスの死後、もう一人のメンバーだったマノロ・バルデス(『100の絵画』no.67)(2)は、やはり美術史上のモティーフを厚塗りのマティエールで処理した作品を制作している。 同じくバレンシア出身のポップ・アート系のグループであるエキーポ・レアリダー(1966-1977)(3)やラファエル・アルメンゴル(1940- )(4)になると、キッチュを活用し、ホセプ・レナウ以来のどぎついまでの印象を与えることになる。 またエキーポ・レアリダーのメンバーの一人だったジョアン・カルデイス(1948- )はグループ脱退(1976)後、からっぽの紳士服をモティーフに、ユーモアを帯びた立体を制作している(fig.29)。 ポップ・アートおよびアンフォルメル双方と接点をもちつつ、そのいずれともことなる活動を展開してきた作家にルイス・ゴルディーリョ(1934- )(『100の絵画』no.54-56)(5)(fig.30)がいる。明るい色調で、具象の場合もあれば抽象的な場合もあるイメージを増殖させていくその作品は、つねに調和のあるまとまりからすりぬけようとするかのようで、その点サウラとの共通点をうかがわせ、また、80年代以降の世代に大きな影響をおよぼしたという。 |
1. cf. Catalogue of the exposition Double figures, Museum of Modern Art, Oxford, 1986. |