このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 1985 > ミニ用語解説:線描-鉄線描 毛利伊知郎 友の会だよりno.8(1985.3.20)

ミニ用語解説:線描―鉄線描

日本や中国の絵画において、古くから描線の重視がなされてきたのは周知の事実である。こうした描線重視の傾向は、近代の日本画の中にもしばしば見られるところで、小林古径・前田青邨・吉川霊華・菊池契月らの作品には、それぞれ個作豊かな美しい線描を見出すことができる。

日本の絵画が多くの影響を受けてきた中国絵画史にあっては、早くから描線の分類・形式化が行われて、様々な名称が与えられてきた。例をあげれば、高古遊絲描・鉄線描・蘭葉描・?頭描などがあり、画史等には10数種の描線の名称を見ることができる。

これら多くの描線のうち、頻繁に用いられるものとして、鉄線描について記してみよう。鉄線描とは、文字通り張りのある鉄線のような描線のことで、肥痩がなく強い緊張感と鋭さを特徴とする。その起源は、古く中央アジアや古代イランにまで遡るといわれ、7世紀後半頃の制作とされる法隆寺金堂壁画は、典型的な鉄線描の作例として著名である。

この古い起源を持つ鉄線描を近代に再生させた画家として、小林古径の存在を忘れることは出来ない。古径の「髪」(昭和6年)や「不動」(昭和15年)は、その好作例であり、そこに見られる美しい線描は根強い東洋美術の伝統を我々に再認識させてくれるものである。

(毛利 伊知郎 学芸員)

友の会だよりno.8(1985.3.20)

合体版インデックス 穴だらけの用語解説集
ページID:000054563