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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 1994 > ミニ用語解説:ジャポニスム 荒屋鋪透 友の会だよりno.36, 1994.7.23

ミニ用語解説:ジャポニスム(日本趣味)

6月18日から7月17日まで開催の『スウェーデンの国民画家-カール・ラーション展』は、日本に憧れた北欧の画家ラーションを紹介する企画。ラーションは自分の画集のなかで「日本は芸術家としての私の祖国である」と述べている。ではラーションの芸術に日本美術はどのように関わっていたのだろうか。

スウェーデンの首都ストックホルムの美術学校で学んだラーションは、1880年代にフランスのパリに留学。当時、パリ万国博覧会に出品されたり、パリ市内の骨董店に並びはじめた浮世絵に興味をもった。すでに印象派の画家は浮世絵に見られる鮮やかな色彩や大胆な構図こ触発された作品を描いていたが、ラーションの場合もそうした「ジャポニスム(日本趣味)」を経験した訳である。

このジャポニスムには作品のなかに日本趣味をうかがわせる日本の美術品や日本人、また浴衣姿の西洋の人物を描いたりするものと、そうしたモチーフではなしに色彩や構図といった絵画技法を日本美術から学んだものとがあるが、ラーションにもそうした作品が見られる。

ある壁画のなかで彼は制作中の自分を描きこんでいるが、そのかたわらに和服で髷を結った日本人がいる。画家自身の証言からそれが日本人画家であることがわかるのである。またラーションのいくつかの肖像画には彼が蒐集した屏風など日本の美術工芸品が描かれているが、ラーションにとって最も重要であったのは、日本絵画の線による表現と装飾性、そして遠近法によらない意表をつく構図法、鮮やかな色彩感覚であった。

19世紀末の北欧の画家がアール・ヌーヴォーやゴーギャンの総合主義の影響を受ける以前に、ラーションは日本美術から流れるような線描表現、極端に奥行をなくし平面性を強調した構図を修得して自らの作品に応用している。ラーションが繰り返し家族の日常生活を描きながら、単調さを回避して、常に緊張感のある画面をつくったのは、日本美術から学んだ技法を巧みに作品に採り入れていたからなのであろう。

〈荒屋鋪 透・学芸員)

友の会だよりno.36, 1994.7.23

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