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美術館 > 展覧会のご案内 > 企画展 > 2021 > 美術にアクセス! 多感覚鑑賞のすすめ 2021年度企画展

「美術にアクセス!――多感覚鑑賞のすすめ」展 会場配布リーフレット オンライン版

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はじめに
序章   鑑賞の前に
第1章 鑑賞のために
第2章 美術と感覚
第3章 彫刻にさわる
第4章 オノマトペと共感覚

【会場配布リーフレットPDF】
*リーフレットのグレーの部分は、実際には透明ニスを盛り上げて印刷しています。
*このPDFファイルは圧縮版のため、音声コードの読取には適しません。リーフレットの文章はこのページにほぼそのまま掲載しています(少し加筆しています)。
*リーフレットには点訳、音訳も用意しています。ご入用の方は、美術館にご連絡ください。
電話:059-227-2100 Eメール:bijutsu2★pref.mie.lg.jp(★を@に置き換えてください)

【「美術にアクセス!――多感覚鑑賞のすすめ」展の詳細ページ】
 

はじめに

「美術にアクセス!――多感覚鑑賞のすすめ」展へようこそ。
交通やインターネットの用語として使われることが多い「アクセス access」は、利用する権利や機会を得るという意味も持つ言葉です。美術館において、アクセスの語は、美術館を利用しづらい人―例えば障がいのある人―のための取組に関連付けて用いられてきました。美術館はすべての人に開かれていますが、今もなお利用しづらい人が数多くいるという課題を抱えています。
三重県立美術館は、「誰もが利用しやすい環境」を整えることを活動指針の一つに掲げ、これまで特別支援学校等との協働を積み重ねてきました。活動を通して明らかになったのは、障がいのある人向けのプログラムが、さまざまな人の潜在的なニーズに応えられる大きな可能性を秘めたものだということです。この展覧会は、連携事業で得た成果を、社会に還元する場でもあります。
展覧会タイトルの「アクセス」という言葉には、利用者が主体的・能動的に美術に関わるという期待を託しています。この展示をきっかけに、受動的になりがちな美術鑑賞を、能動的な体験にするヒントを得ていただけたら幸いです。
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序章   鑑賞の前に

当館では、2020年度に、美術館をさまざまな人が利用しやすい場にするために、「美術館のアクセシビリティ向上推進事業」をスタートさせました。美術館を利用しづらい人は、障がいのある人に限られません。小さい子どもやその家族、遠くに住んでいる人も、気軽には来館しづらいのではないでしょうか。作品鑑賞の前に、序章では、この事業で開発したコンテンツ等をご紹介します。
【令和2年度「美術館のアクセシビリティ向上推進事業」報告ページ】
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第1章 鑑賞のために

美術館で展示している作品の多くは、視覚芸術です。見るという行為は見られる作品と 私の間に一定の距離を生み出します。私が自分から積極的に作品を鑑賞するためには、どのような工夫が必要でしょうか?美術館では、利用者の鑑賞を充実させるためにさまざまな取組を行っています。例えば、レクチャーやワークショップ等の企画や運営。また、パネルや印刷物等の掲示や配布も行います。
作品と「私」の距離を縮めるためには、視覚以外の感覚の活用も有効です。過去の特別支援学校との連携事業では、複数の感覚を使う鑑賞プログラムが行われました。そのような鑑賞方法を指して、この展覧会のサブタイトルには「多感覚鑑賞」という造語を用いています。障がいのある人向けの教育プログラムでは、このような「多感覚」の体験が重視されています。
ここでは、これまで当館で最も多くの教材が開発されてきた2点の所蔵品と、それらの鑑賞を助ける教材を一緒にご紹介します。感覚を活用して、作品にアクセスしてみてください。
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第2章 美術と感覚

美術とは、目に見えるものだけをかたちにしたものではありません。さまざまな経験を蓄積した作家の身体から生み出される作品は、視覚以外の感覚や想像力を強く刺激するものです。この章では、聴覚や嗅覚、味覚、皮膚感覚と深くかかわる所蔵品をご紹介します。

聴覚
最初にご紹介する作品は、向井良吉の《発掘した言葉》という彫刻。この作品について作者は、「音響感を造形としてとりあげた」と言っています。どのような声が感じられるでしょうか。駒井哲郎の銅版画《束の間の幻影》の作品タイトルは、作曲家セルゲイ・プロコフィエフのピアノ曲からとられたもの。音に色を感じることができたと言われるヴァシリー・カンディンスキーの版画もご紹介します。

聞こえない人と見えない人
画家の松本竣介は、旧制中学校在学時に、聴力を失いました。フランシスコ・デ・ゴヤもまた、40代の頃に聴力を失った画家です。この2人は現代の基準で言えば、「障がいのある人」ですが、美術館で作品を解説する際、彼らの聞こえない特性に触れることは、あまり ないかもしれません。橋本平八の木彫《弱法師》は、能の演目「弱法師」に登場する目の見えない人物、俊徳丸を表した作品。俊徳丸は、細い杖を右手に持ち、少し前かがみになりながら左手を高く掲げています。

嗅覚と味覚
嗅覚と味覚は分かちがたく結びつく感覚です。展示室では作品保護の観点から飲食をお断りしていますが、ここでは頭のなかで嗅覚と味覚を活性化させてみましょう。香りの強い梅やバラを描いた作品から、牛鍋や焼芋を描いた作品まで、嗅覚や味覚を刺激する作品をご紹介します。

皮膚感覚
ウィリアム・ブレイクの版画集『ヨブ記』の一場面において、サタンに踏みつけられるヨブのこわばった身体は、彼が痛みにもだえ苦しむ様子を伝えています。その隣に展示しているのは、スペインの現代作家ナティビダー・ナバローンによる立体作品。ベルベットでおおわれた、私のからだは針と糸で縫い合わされようとしています。
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第3章 彫刻にさわる

この部屋では、実際に彫刻作品をさわりながら鑑賞することができます。ここで展示している作品の素材はブロンズ。これらの作品は、はじめは粘土等のやわらかい素材で形が作られ、段階的に強い素材に置き換えられていきました。素材は変わっても、彫刻家の手のあとはブロンズの表面に、はっきりと残っています。
これまで当館は、目の見えない/見えにくい人が来館した時にのみ、さわる鑑賞をすすめてきましたが、2016年度に初めて特別支援学校で、目の見える人を対象に彫刻にさわる鑑賞プログラムを実施しました。この体験は、複数の感覚の活用が、作品の認知・理解を促進して、能動的な鑑賞を導くことを、美術館スタッフが身をもって学ぶ機会となりました。ここでは多感覚を同時に使うことをすすめていますが、視覚と触覚それぞれの特性を感じていただくために、作品1点は視覚を使いにくい環境で展示しています。
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第4章 オノマトペと共感覚

オノマトペとは…状態を表す擬態語(例:ごつごつ)や音を表す擬音語(例:ざあざあ)等のこと。
共感覚とは…ある刺激に対して、それに対応する感覚だけでなく、それ以外の感覚が自動的に生じること。例えば、音を聞くと色を感じる等。


最終章では、三重県出身の画家・元永定正の絵画を紹介します。出品作品のなかに《Piron Piron》という絵画があります。「ぴろんぴろん」という言葉から、どのようなものを想像しますか?この擬態語とも擬音語ともつかないオノマトペは、視覚や触覚、聴覚等の独立した感覚ではなく、より大きな感覚世界に根ざしているかのようです。
今回の展覧会では、想像力で感覚を統合したり、複数の感覚を同時に活用したりする鑑賞方法を提案してきました。ユーモラスで底抜けに明るい元永作品を、ぜひ感覚を研ぎ澄ませてお楽しみください。
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「美術にアクセス!――多感覚鑑賞のすすめ」展 鑑賞ガイド
執筆・編集:鈴村麻里子、髙曽由子、内藤由華(三重県立美術館学芸普及課)
デザイン:桑田知明
タイトルロゴ:楠麻耶
印刷:サンメッセ株式会社
発行:美術館のアクセシビリティ向上推進事業実行委員会、三重県立美術館
発行日:2021年6月4日
令和3年度 文化庁 地域と共働した博物館創造活動支援事業
無断転載・複製を禁じます。
 

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