美術館のコレクション(2015年度常設展示第2期)
2015年6月30日(火)-9月27日(日) 会場 柳原義達記念館 A室
1982年9月25 日に開館した三重県立美術館は、今年33回目の秋を迎えます。美術館の顔ともいうべき収蔵品の数も順調に増え続け、当初は400点足らずであった作品数も、5000点を超えるまでに成長しました。
三重県立美術館の作品収集方針は、以下の4本の柱で構成されています。
(1) 江戸時代以降の作品で三重県出身ないし三重にゆかりの深い作家の作品。
(2) 明治時代以降の近代洋画の流れをたどることのできる作品、また日本の近代美術に深い影響を与えた外国の作品。
(3) 作家の創作活動の背景を知ることのできる素描、下絵、水彩画等の作品。
(4) スペイン美術。
これらの方針の下に購入したり、あるいは寄贈を受けたりしてコレクションとなった作品たちは、「美術館のコレクション」や「柳原義達の芸術」と題されて、常設展示室や柳原記念館において皆さんにご覧いただいています。一見同じような配列に見えても、それらは一年のうち4回展示替えが行われ、企画展示と連動するテーマを設けたり、地元作家の顕彰のために特集展示を組んだりするなど、常に多種多彩な内容でお楽しみいただけるよう努めています。
芸術のジャンルは、絵画、彫刻、工芸など多岐にわたります。加えて、近年はどの分類に属さないような新たな芸術も次々に誕生し続けています。芸術を取り巻く流れが速さを増していく中で、県立美術館として、何を展示し、何を収集するかということについて、一層広い視野と柔軟な姿勢、そして何よりも来館者からの理解が求められてきているでしょう。
美術館のコレクションの魅力のありかを考える時、突き詰めればそれは「いつも/そこに」あることではないかと思い至ります。このことが生み出す親近感や安心感はコレクションの何よりの強みです。「いつも/そこに」あるからこそ、変わりゆくものを映し出す鏡でありたい。コレクションを守る美術館スタッフはいつもそれを願っています。
出品作品リスト
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寄贈者 |
---|---|---|---|---|---|
藤島武二 | 1867-1943 | 大王岬に打ち寄せる怒濤 | 1932(昭和7)年 | 油彩・板 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
安井曾太郎 | 1888-1955 | 静物 | 1950(昭和25)年 | 油彩・キャンバス | |
小林研三 | 1924-2001 | ベルの想い出(犬) | 1950(昭和25)年 | 油彩・カンヴァス | 作者寄贈 |
川口軌外 | 1892-1966 | 作品 | 1951(昭和26)年 | 油彩・キャンバス | |
小林研三 | 1924-2001 | 猫と鳥のいる風景 | 1950年代 | 油彩・カンヴァス | 加藤真砂氏寄贈 |
鶴岡政男 | 1907-1979 | 黒い行列 | 1952(昭和27)年 | 油彩・キャンバス | |
鳥海青児 | 1902-1972 | 彫刻(黒)をつくる | 1953(昭和28)年 | 油彩・キャンバス | |
脇田和 | 1908-2005 | 鳥と横臥する裸婦(女) | 1955(昭和30)年 | 油彩・キャンバス | |
中谷泰 | 1909-1993 | 煤煙 | 1957(昭和32)年 | 油彩・キャンバス | |
桂ゆき | 1913-1991 | 作品 | 1958(昭和33)年 | 油彩・キャンバス | |
宮崎進 | 1922- | 石狩 | 1958(昭和33)年 | 油彩・板 | 作者寄贈 |
浅野弥衛 | 1914-1996 | 作品 | 1960(昭和35)年 | 油彩・キャンバス | |
浅野弥衛 | 1914-1996 | 作品 | 1961(昭和36)年 | 油彩・キャンバス | |
伊藤利彦 | 1928-2006 | 伝説 | 1961(昭和36)年 | 油彩、塗装用パテ・キャンバス | |
難波田龍起 | 1905-1997 | 創生 A | 1961(昭和36)年 | 油彩・キャンバス | |
向井良吉 | 1918-2010 | 風の中の壁 | 1962(昭和37)年 | ZAS合金 |
作者名 |
生没年 |
作品名 |
制作年 |
材料 |
寄贈者 |
---|---|---|---|---|---|
ムリーリョ、バルトロメ・エステバン |
1617-1682 |
アレクサンドリアの聖カタリナ |
1645-50年頃 |
油彩・キャンバス |
|
作者不明 |
|
聖ロクス(ロック) |
17世紀 |
油彩・キャンバス |
有川一三氏寄贈 |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ |
1746-1828 |
アルベルト・フォラステールの肖像 |
1804年頃 |
油彩・キャンバス |
公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
デュフィ、ラウル |
1877-1953 |
裸婦立像 |
1928年 |
油彩・キャンバス |
寄託品 |
ヴラマンク、モーリス・ド |
1876-1958 |
風景 |
1930年頃 |
油彩・キャンバス |
寄託品 |
シャガール、マルク |
1887-1985 |
枝 |
1956-62年 |
油彩・キャンバス |
公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
アルバセテ、アルフォンソ |
1950- |
幻影 1 |
1990年 |
油彩・キャンバス |
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シシリア、ホセ・マリア |
1954- |
蜜蜂の巣箱 Ⅲ 10点組 |
1993年 |
蝋、混合技法、板 |
|
シシリア、ホセ・マリア |
1954- |
衝立 小さな花々 IV |
1998年 |
油彩、蝋、紙、板 |
|
シシリア、ホセ・マリア |
1954- |
衝立 小さな花々 V |
1998年 |
油彩、蝋、紙、板 |
|
ユトリロ、モーリス |
1883-1955 |
風景 |
制作年不詳 |
油彩・キャンバス |
寄託品 |
マイヨール、アリスティード |
1861‐1944 |
歩むマリー |
制作年不詳 |
ブロンズ |
寄託品 |
追悼展示 木下富雄
2015年6月30日(火)-9月27日(日) 会場 三重県立美術館 常設展示室 第1室
現在の四日市市富田一色町出身の版画家・木下富雄が、昨年暮れに91年の生涯を閉じました。戦後間もない1952年、棟方志功の活躍を知り、日本人に適した芸術表現として木版画に着目した木下は、その後一貫して木版画の制作を続けました。その題材の多くは人物で、初期の《手》《Cry》《Women》で見られた人物の表情やかたちはまもなく抽象化、没個性化していきました。そして、自己の表現を確立した1958年の第26回日本版画協会展では、《仮面たちNo.1》などにより日本版画協会賞を受賞、その年に出品したニューヨーク、セント・ジェームズ教会主催の版画展でも2等賞を受賞、作品はニューヨーク近代美術館の買い上げとなりました。
当館では1982年の開館記念展「三重の美術・現代」からはじまり、1995年には県民ギャラリーで「木下富雄展」を開催。ことあるごとにこの重要な版画家を紹介するとともに、これまで41点にのぼる作品を収集してまいりました。
ギザギザとした輪郭を残す「突き彫り」の技法と、抑制された色彩による多色木版。作品を近くで眺めてみると、どれも実に細やかな神経で想像力にあふれた表現世界が隅々にまで広がっていることがわかります。生前、社会情勢を敏感に受け止め、人物像を介して繊細かつ強靭に発信し続けたこの版画家が残した作品の数々は、今、改めて評価される時期にきているといえるでしょう。
作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
---|---|---|---|---|
Cry | 1955(昭和30)年 | 木版・紙 | 59.5×45.0 | |
Woman | 1955(昭和30)年 | 木版・紙 | 59.0×43.5 | |
手 | 1955(昭和30)年 | 木版・紙 | 60.0×45.5 | |
仮面 3 | 1957(昭和32)年 | 木版・紙 | 55.5×74.5 | |
仮面 4 | 1957(昭和32)年 | 木版・紙 | 56.0×74.5 | |
仮面たち(赤) | 1957(昭和32)年 | 木版・紙 | 61.0×92.5 | |
仮面たち No.2 | 1958(昭和33)年 | 木版・紙 | 61.0×91.0 | |
仮面たち (B) | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 57.5×91.0 | |
Face(顔と手) | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 40.5×22.5 | 杉浦高己氏寄贈 |
Face(少女) | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 45.5×32.0 | 杉浦高己氏寄贈 |
習作 | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 57.0×87.5 | |
習作 2 | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 81.0×54.5 | |
Face(災害) | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 61.0×90.5 | |
顔(五人) | 1959(昭和34)年 | 木版・紙 | 56.0×77.5 | |
Face |
1959(昭和34)年 1993(平成5)年再刷 |
木版・紙 | 64.5×91.5 | |
Face(童女) | 1960(昭和35)年 | 木版・紙 | 38.5×31.5 | 杉浦高己氏寄贈 |
灰色の人々 | 1960(昭和35)年 | 木版・紙 | 86.5×60.0 | 作者寄贈 |
Face(人) |
1960(昭和35)年 1994(平成6)年再刷 |
木版・紙 | 64.5×91.0 | 作者寄贈 |
Face(終焉) |
1961(昭和36)年 1985(昭和60)年再刷 |
木版・紙 | 49.0×78.5 | 作者寄贈 |
無題 | 1962(昭和37)年 | 木版・紙 | 46.0×32.5 | |
習作(黒B) | 1962(昭和37)年 | 木版・紙 | 91.0×60.0 | 作者寄贈 |
大きな少年 | 1962(昭和37)年 | 木版・紙 | 82.0×54.0 | 作者寄贈 |
Face(空へ) |
1962(昭和37)年 1981(昭和56)年再刷 |
木版・紙 | 54.5×36.0 | 作者寄贈 |
顔(顔の中で) | 1965(昭和40)年 | 木版・紙 | 57.0×89.0 | 作者寄贈 |
Face(夜) | 1965(昭和40)年 | 木版・紙 | 68.5×46.0 | 作者寄贈 |
顔(面) 1 | 1967(昭和42)年 | 木版・紙 | 32.5×41.0 | |
空(習作) |
1968(昭和43)年 1994(平成6)年再刷 |
木版・紙 | 78.0×54.0 | 作者寄贈 |
Face(ナンセンス) | 1975(昭和50)年 | 木版・紙 | 73.5×46.0 | 作者寄贈 |
空 (習作) | 1976(昭和51)年 | 木版・紙 | 59.0×90.0 | 作者寄贈 |
Face (白い勲章) | 1979(昭和54)年 | 木版・紙 | 68.5×45.0 | 作者寄贈 |
黒に囲まれて | 1980(昭和55)年 | 木版・紙 | 95.0×61.0 | 作者寄贈 |
顔(白日の声) | 1981(昭和56)年 | 木版・紙 | 43.0×71.0 | 作者寄贈 |
Face (語らず) | 1981(昭和56)年 | 木版・紙 | 47.0×90.0 | 作者寄贈 |
Face (友よ高らかに) | 1982(昭和57)年 | 木版・紙 | 41.0×78.0 | 作者寄贈 |
Face (丸と角) | 1982(昭和57)年 | 木版・紙 | 47.5×72.0 | 作者寄贈 |