大橋歩の想像力 Imagination from/into/beyond Words
出品作品リスト
第1室 絵本、こどもむけに
はじめて手がけた絵本の仕事は、谷川俊太郎の詩による『由利の唄』(1977年)への参加であった。その後も長田弘や松野正子など、多くの詩人や作家たちと組み、彼らのことばが紡ぎだす世界を、大橋はその手で丁寧に織り上げていった。「ストーリーを読んで、しばらくすると、もやーっと描きたい絵が浮かんでくる」と語る大橋にとって、挿絵を描くことは、すでに一つの解釈であったに違いない。混じりけのない強い色は、作品世界を一層鮮やかに彩り、余分なものをそぎ落とした形は、単純さゆえに私たちの深いところへと訴えかけてくる。
画面いっぱいに、のびやかに跳ね、おおらかにはしゃぐ子供や動物に、時に作者や編集者の意向とぶつかることはあっても、常に楽しみながら絵本を描いていたと振り返る大橋自身の姿が投影されているかのようだ。
タイトル | 種別 | 文 | 出版社 | 発行年 |
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鳩を喰う少女 | 表紙、挿絵 | 草森紳一 | 大和書房 | 1974年 |
みつからない みつからない | 挿絵 | 関根栄一 | 学研 | 1974年 |
大橋歩のわらべ遊び | 挿絵 | 大橋歩 | 主婦と生活社 | 1975年 |
さよならさんかく またきてしかく | 表紙、表紙(文庫版)、表紙(文庫版別案)、挿絵 | 大橋歩 | 大和書房 | 1976年 |
したきりすずめ | 挿絵 | 日本ブリタニカ | 1978年 | |
らいおんごう がんばれ! | 挿絵 | 松野正子 | 文研出版 | 1978年 |
おしょうがつさん | 表紙、挿絵 | 谷川俊太郎 | 福音館書店 | 1983年 |
わたしのにゃんこ | タイトル画 | 矢野顕子 | NHK「みんなのうた」 | 1983年 |
かいじゅうになった女の子 | 表紙、挿絵 | 末吉暁子 | 偕成社 | 1984年 |
ねこのき | 表紙、挿絵 | 長田弘 | クレヨンハウス | 1996年 |
くーすけくまくん | 挿絵、ラフ原画、ダミー本、スクリーンセーバー | 大橋歩 | マガジンハウス | 2001年 |
あしたのあたしはあたらしいあたし | 挿絵 | 石津ちひろ | 理論社 | 2002年 |
これは おひさま | 表紙、挿絵 | 谷川俊太郎 | ブッキング | 2007年 |
第2室 『村上ラヂオ』の世界
村上春樹のエッセイ『村上ラヂオ』は『アンアン』(マガジンハウス)誌上で2000年3月に連載が始まった。2001年まで1年続いた後、9年後の2010年の再開、そして2012年の終了まで、大橋が手がけた挿絵版画の数は210点、それらは3冊の単行本に収録され、今も多くの読者を獲得し続けている。
元来村上の著作を愛読していた大橋にとって、この仕事は特別な意味を持ち「お話が決まってからは、本当に自由に描かせていただきました」と振り返る。一方で、「実は私はどの場面を絵にするかを考えながら読ませて頂いていたので、村上さんのエッセイを一読者として楽しめませんでした」という、ファンゆえの複雑な心境も吐露している。
用いられている技法はドライポイント。下絵をカーボン紙で銅板に転写し、ニードルなどで引掻くように絵を描く。インクの詰め具合や拭き取り加減など、大橋の信頼のあつい摺り師によって作品は命を吹き込まれ、『村上ラヂオ』の世界は作り上げられていった。
タイトル | 種別 | 文 | 出版社 | 発行年 |
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『村上ラヂオ』 | 表紙、挿絵、連載ページ | 村上春樹 | マガジンハウス | 2001年 |
『村上ラヂオ: おおきなかぶ、むずかしいアボカド』 | 表紙、挿絵、原版、連載ページ | 村上春樹 | マガジンハウス | 2011年 |
『村上ラヂオ3:サラダ好きのライオン』 | 表紙、挿絵、ラフ原画、原版、連載ページ | 村上春樹 | マガジンハウス | 2012年 |
第3室 ことばから / ことばをこえて
1970年に創刊された雑誌『アンアン』で初めてエッセイを発表、続いて初エッセイ集『トマトジュース』(1972年)を出すなど、『平凡パンチ』専属イラストレーター終了の頃からからすでに、大橋のことばへむける感覚は育まれていた。それが花開くのは1990年「ピンクハウス」の仕事を終えて以降のことである。書籍の表紙や挿絵だけでなく、エッセイストとしての活躍が目立ってくるようになる。自身のライフスタイルの紹介やファッション指南など、率直で飾らない書きぶりは、多くの人の憧れと共感を呼び、著書は現在100冊を超える数にのぼっている。
一方で、従来の作風から離れた、不思議な味わいのイラストレーションを大橋が手掛けていることを知る人は少ない。どこか不気味ささえ漂わせるこれらの作品について大橋は「詩や散文のいいところは、読む人によって幾通りにも解釈できるところ」とし、ことばの受け手側の多様な読み取りを積極的に楽しみ、それを独自のスタイルで視覚化している。大学時代に文芸部に所属していた大橋の新たな一面が垣間見られるようで興味深い。
タイトル | 種別 | 文 | 出版社 | 発行年 |
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雑誌『MEN'S CLUB』 | 挿絵 | 婦人画報社 | 1964年 | |
雑誌『話の特集』 | 挿絵 | 大橋歩 | 話の特集社 | 1970年 |
トマトジュース | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 講談社 | 1972年 |
雑誌『生活の絵本』 | 表紙 | 生活の絵本社 | 1975~77年 | |
風景 | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 読売新聞社 | 1981年 |
おしゃれの絵本 Prat2 | 挿絵 | 大橋歩 | 講談社 | 1984年 |
おしゃれ大好きノート | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1985年 |
『おしゃれ上手』 | 挿絵 | 大橋歩 | 集英社文庫 | 1985年 |
おしゃれのレッスン | 挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1986年 |
大人のおしゃれノート | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1986年 |
涙はひとりでながすもの | 表紙 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1986年 |
かわいくなりたい | 表紙 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1987年 |
OLのおしゃれノート | 挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1988年 |
心のささえに | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1988年 |
『OLのおしゃれ手帖』 | 挿絵 | 大橋歩 | 講談社文庫 | 1988年 |
どきどき着物 | 挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 1989年 |
楽しい季節 | 表紙 | 大橋歩 | 集英社文庫 | 1890年 |
神様におねがい | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 大和書房 | 1991年 |
おしゃれになりたい | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 東京書籍 | 1992年 |
オードリー・ヘップバーンのおしゃれレッスン | 挿絵 | 大橋歩 | 文藝春秋 | 1993年 |
ゆかたでうきうき | 挿絵 | 大橋歩 | マガジンハウス | 1996年 |
雑誌『鳩よ!』 | 挿絵 | マガジンハウス | 1998年7月号 | |
雑誌『鳩よ!』 | 挿絵 | マガジンハウス | 1998年10月号 | |
おしゃれにうつつ | 表紙、挿絵 | 大橋歩 | 幻冬舎 | 1999年 |
雑誌『本とコンピューター』 | 表紙 | 大日本印刷株式会社ICC本部 | 1999年夏号 | |
雑誌『本とコンピューター』 | 挿絵 | 大日本印刷株式会社ICC本部 | 1999年夏号 | |
雑誌『本とコンピューター』 | 表紙 | 大日本印刷株式会社ICC本部 | 1999年秋号 | |
雑誌『本とコンピューター』 | 表紙 | 大日本印刷株式会社ICC本部 | 2000年冬号 | |
テーブルの上のしあわせ | 挿絵 | 大橋歩 | 集英社 | 2001年 |
おしゃれ生活 | 挿絵 | 大橋歩 | 小学館 | 2001年 |
大好き だるまー | 挿絵 | 大橋歩 | 大和書房 | 2003年 |
おしゃれは大事よ | 挿絵 | 大橋歩 | マガジンハウス | 2005年 |
日々が大切 | 挿絵 | 大橋歩 | 集英社 | 2005年 |
着物は楽しい | 挿絵 | 大橋歩 | マガジンハウス | 2005年 |
あの道 この道 今の道 | 挿絵 | 大橋歩 | 文化出版局 | 2008年 |