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美術館 > 刊行物 > 年報 > 2011年度版 > 年報2011 企画展 イケムラレイコ うつりゆくもの Leiko Ikemura: Transfiguration 2011.11.8-2012.1.22

B-企画展-5

年報2011年度版 【イケムラレイコ うつりゆくもの Leiko Ikemura: Transfiguration】

 

2011年11月8日(火) ~2012年1月22日(日)

 

【主催】...三重県立美術館、東京国立近代美術館

【協力】...ルフトハンザ カーゴ AG

【後援】...中日新聞社、津市、津市教育委員会、三重エフエム放送、三重テレビ放送

【助成】...財団法人三重県立美術館協力会、公益財団法人岡田文化財団、芸術文化振興基金、宝くじ収益金充当事業

【担当】...原舞子、毛利伊知郎

【デザイン】...中島デザイン

 

展覧会の概要

 三重県津市出身で現在はドイツを拠点に活動するアーティスト、イケムラレイコ。イケムラの作品はこれまでにも日本国内の美術館、ギャラリー等で紹介される機会があったものの、そのほとんどは1990年代以降の作品にとどまっていた。今回の個展は、イケムラがヨーロッパに渡り作家活動をスタートさせた1980年代前半から現在にいたるまでの、絵画、彫刻、ドローイングといった多岐にわたる制作を包括的に紹介する日本で初めてとなる回顧展として位置づけられる。

 日本国内の主要な美術館、ギャラリーに収蔵されるコレクションに加え、国内所蔵家のコレクション、またドイツを中心とした海外のギャラリー、個人所蔵家、作家本人からの借用も含め、総数164点を当館において展示した。建築家のフィリップ・フォン・マットによる会場構成、イケムラレイコ自身による会場インスタレーション等、当館の常設展示室以外のほとんどのスペースを用いて展示する、これまでにない大規模個展となった。

 また、会期中にはイケムラレイコと松本透・東京国立近代美術館副館長によるアーティストトーク、担当学芸員によるギャラリートークを3回実施した。

◎会場の構成は以下の通り。

1、猫と魚の神話 Fish and Cat Mythology (県民ギャラリー)
作家活動を始めた1980年代前半のドローイング、エッチング、80年代後半の絵画作品を展示。鉛筆や木炭といったシンプルな画材を用い、素早く簡潔な線描で描かれたドローイングには他者との共生がときにユーモアを交えて描かれている。80年代後半の絵画では、粗い筆触が当時の新表現主義の潮流を伝える一方、自己とは何かと問い続ける作家の内面的な闘いが感じられる。

2、アルプスのインディアン Alpen Indeianer (企画展示室第1室前半)
1989年から90年にかけてアルプスの山奥で生活をしながら制作された風景画のシリーズを展示。80年代の線を中心とした描写は影をひそめ、代わりに面を中心として形態が混ざり合う表現へと変化する。西洋の油彩画という技法を用いながら、雪舟などの東洋の作品構図が紛れ込み、画面の中にはいくつものイメージの層が重ねられている。

3、原始のかたち Emerging figures (企画展示室第1室後半)
1990年代半ばから制作された小型の絵画作品、陶による彫刻作品を展示。動物と植物と人間が融合したような小さないきものの姿がかたちづくれれている。これらの不思議ないきものたちの体には小さな穴が開けられており、それはいきものの内側に宿る生命のありかへと我々の意識を誘い込むかのようである。

4、地平線にむかって Toward the Horizon (企画展示室第2室)
1990年代後半に制作された地平線とともに描かれる少女をモティーフとした絵画作品を展示。画面を横切る光の帯の上に身を横たえる少女たち。顔はあいまいに描かれ、表情をはっきりと読み取ることはできない。目の粗い布地に絵具を染み込ませて塗り重ねていく時間の蓄積と、絵具のにじみによって生じたストップモーションのような時間のずれが、絵画の中には折り重なっている。

5、うみのへや Seascapes (企画展示室第3室前半)
2000年代前半に制作された海をモティーフとした絵画作品を展示。寄せては反す波が見ている者の視線を画面の奥へと引き込み、絵画という平面でありながら、そこに強い奥行を生み出す。この時期から複数の少女の姿がひとつの画面上に描かれるようになるが、現れては異なる方向へと走り出し、姿をとらえようとすれば離れていくさまは掴みどころがなく、ひとところにとまらない波の姿と重なり合う。

6、人物から風景へ Figure-Scape (企画展示室第3室後半)
2000年代後半に制作された横たわる人物をモティーフにした絵画作品、写真作品と木をモティーフとした絵画作品を展示。蜃気楼のように立ち上ってゆく木と揺れ動く枝葉。写真作品の人物の髪の毛の流れや動きと重なって見え始め、人物と風景の交差と姿の融合があらわされている。

7、やまのへや Landscapes (企画展示室第4室)
2000年代後半から現在までに制作された絵画、ドローイングを展示。《山水》と名付けられた最新作(2011年制作、今回は5点組として発表)には、幻想的な風景の中に、岩から生まれてきた人物や動物、顔のある山などが描かれている。自然と人間がひとつの作品の中で混ざり合い、往還しながら揺れ動くさまが描かれている。

8、うかびながら Floating (柳原義達記念館ロビー)
2000年代後半に制作された絵画、陶製の彫刻を展示。これまでの作品では明らかにされてこなかった人物の表情が眠る顔としてはっきりと描かれるようになる。しかし彼らは単に熟睡しているわけではなく、眠りと覚醒、生と死、意識と無意識の中間で、次なる目覚めを待ちながら漂い浮かんでいるようである。

9、やみのへや Lying Figures (柳原義達記念館B室)
1990年代後半から制作されている陶製の彫刻作品と、イケムラ自身による詩のインスタレーション。他の部屋とは異なる暗い部屋に配置された少女たちの彫刻は、蓮の葉を思わせる台座に置かれ、水面に浮かぶようにも見える。そこにあわせられたイケムラの詩は、見ている者の想像力を掻き立て、イケムラレイコの作り出す作品世界へといざなう。

10、本 Books (美術情報室)
これまでにイケムラが手がけたアーティストブック、詩集などを展示。幼いころから文学に親しんでいたイケムラは本に関わる仕事にも情熱を注いできた。海外で出版された貴重な書籍も含め、手に取って読むことができるスペースとした。

 

会期中のイベント

アーティストトーク 

イケムラレイコ×松本透(東京国立近代美術館副館長)

11月12日(土) 午後2時~午後3時30分

会場:三重県立美術館講堂

参加人数:140名

◎イケムラレイコ氏と松本透・東京国立近代美術館副館長による対談形式のアーティストトークを実施。

 

ギャラリートーク

11月19日(土)、12月10日(土)、1月14日(土) いずれも午後2時から(1時間程度)

◎展覧会担当学芸員が展示室にて展覧会の見どころやイケムラレイコの作品について解説を行った。

参加人数: 11月19日(土) 9名、 12月10日(土) 25名、 1月14日(土) 40名

 

主な記事等

中日新聞

「イケムラさん 故郷で初、過去最大回顧展 きょう津で開幕」(河北彬光) 2011.11.8

「出会いが紡ぐ 総局長インタビュー 津市出身 芸術家 イケムラレイコさん 日欧を駆けるアーティスト」(土岐正紀) 2011.11.8

「美術評 イケムラレイコ うつりゆくもの ―自然の人間が融合」(宮川まどか) 2011.11.29

[連載 美術館だより]

「イケムラレイコ 黒に舞う」(原舞子) 2011.11.13

「イケムラレイコ 滝」(原舞子) 2011.11.20

「イケムラレイコ 二羽の鳥をかかえた黄色い服」(原舞子) 2011.11.27

「イケムラレイコ 黒の中に青いミコと」(原舞子) 2011.12.4

「イケムラレイコ ひざまずいて(目に身をあずけながら)」(原舞子) 2011.12.11

「イケムラレイコ 青に浮かぶ顔」(原舞子) 2011.12.18

「イケムラレイコ 山水」(原舞子) 2011.12.25

「イケムラレイコ birdgirl」(原舞子) 2012.1.8

「イケムラレイコ 黒いヘッド」(原舞子) 2012.1.15

「イケムラレイコ あさのうみ」(原舞子) 2012.1.22

毎日新聞

「アート イケムラレイコ 夜の浜辺」(原舞子) 2012.1.7

朝日新聞

「イケムラレイコ回顧展 「うつろ」から個への広がり」(増田愛子) 2011.12.10

産経新聞

「とぴっくす イケムラレイコ うつりゆくもの 静かにうつろい続ける世界」(坂下芳樹) 2012.1.6

京都新聞

「アートスクエア イケムラレイコ うつりゆくもの」 2011.1.26

ぴあ

「美術 Art 三重に、津に、おかえりなさい! ヨーロッパを拠点に活躍する作家が凱旋」

 

放送(おもな放映)

エフエム三重

「広瀬隆のラジオ魂」 2011.11.8

東海ラジオ

「かにタク言ったもん勝ち」 2011.11.8

「兵藤ゆきのハッピーにゆきね~!」 2012.1.7

 

 

展覧会図録

 

出品作品リスト

 

展覧会開催時の案内ページ

 

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