作品解説;アンダーグランドピアノ
cat.no.235 1984年
「レオナルドが日々の発送を書き留めた手稿を紹介する展覧会で鏡文字に出会い、私の心は鏡という不思議な空間にすっかり独占された。…(中略) …鏡は物をそのまま映し出すとは限らないのである。…(中略) …
「だとすると、正常な形ではない立体が鏡に映ることによって、正常な形に見えてしまうこともありうるのではないか。つまり、鏡像は正常だが、実際は正常ではない形を創作することが可能だということになる。こんなこと・lえ始めたのは1983年だった。ところが、試してみるとこれが難しい。鏡文字のような平面ならやさしいが、立体の場合は正常に見える視点が一点しかないのだ。
「翌年に完成した《アンダーグランドピアノ》(cat.no.235)は、どう見ても意味不明の黒いオブジェの前に置いた椅子に座って視線を前の鏡に向けると、自分がグランドピアノを演奏するピアニストになって映る作品」(1)。『福田繁雄の視覚からくり展』(伊勢丹美術館・他、1984年)に出品された。(石崎勝基)
1. 『福田繁雄 DESIGN 才遊記』(ggg Books別冊-6、DNP文化振興財団、2008)、p.118。