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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2011 > コラム エッシャーと福田繁雄 ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展図録

ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展図録

 

コラム;エッシャーと福田繁雄

 
 「M.C.エッシャー(1898-1972)は二次元の画面に三次元ではありえない『不可能な図形』を導入し、交錯させて、独特の不思議な世界をつくり続けたオランダの版画家です」(1)。 

 福田にとってエッシャーとの出会いは『第1回東京国際版画ビエンナーレ』(東京国立近代美術館、1957年)の際で、「そのシチュエーションの正確さ、完璧な構図、発想と技術。本当に魅せられましたね」という(2)。エッシャーと己の共通点として福田は、「常識を少しだけずらすような感じ」を得るために「しっかり絵を描くということ」を挙げている(3)。

 エッシャーの作品をもとに福田は、「立体空間を一点視点の平面として考えはじめて、1982年に《物見の塔》、1985年に《滝》の三次元立体を完成させた」(4)。後者(cat.no.251)は『視覚サーカス’85』(松屋銀座・他、1985年)に出品されたが、その原画(参考図版)について、「つくられた水路を流れる水が滝となり、滝つぼに落下した水が一回りして再び滝になって流れ落ちる《WATERFALL》など無限に続く非合理の世界」と記している(5)。

 「あれは、遠近法の応用で、ある一点で見るとちゃんとエッシャーの絵のように見える」(6)。「水路を三分割し、隠れた三個の小型モーターで水流を作るという発想で完成させた苦心の迷(ルビ:ヽ)作だ」(7)。「先ず、何もないスタジオにモニターカメラをしかけるんですよ。そこにエッシャーの滝の絵を透明の板にプリントアップしちゃうんです。それをはめこんでおいて、モニターを見ながら『柱、もうちょっと右。もうちょっと』なんて言って位置を調整して組み上げていってもらう」という手順で制作された(8)。(石崎勝基)

 

1. 福田繁雄『視覚トリック』(六耀社、1982 )、p.158。

2. 福田繁雄『デザイン快想録』(誠文堂新光社、1996)、p.10、p.43、p.199。また、『福田繁雄 DESIGN 才遊記』(ggg Books別冊-6、DNP文化振興財団、2008)、p.100、p.140。

3. 『タイムトンネルシリーズ Vol.27 福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』(ガーディアン・ガーデン、クリエイションギャラリーG8、2008 )、p.47。

4. 『アイデア別冊’91・11月号 FUKUDA 福田繁雄偉作集』(誠文堂新光社、1991)、p.81。

5. 福田繁雄『アイデアのエレメント』(美術出版社、1977)、p.64。また、『福田繁雄のトリックアート・トリップ』(毎日新聞社、2000)、pp.30-31でさらに詳しく記述されている。

6. 前掲『福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』、p.42。

7. 前掲『福田繁雄のトリックアート・トリップ』、p.31。

8. 前掲『福田繁雄 ハードルは潜kuguれ』、p.42。また、「『視覚サーカス’85』福田繁雄の視覚トリック最新作」、『アイデア』、no.191、1985.7、pp.54-55、p.57に制作過程のさらに詳しい説明がある。

 

参考図版 M.C.エッシャー、《滝》、1961年、石版画、38×30cm

 

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