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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2006 > モネ《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》 生田ゆき 友の会だより no.71

友の会だより所蔵品解説

クロード・モネ《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》

クロード・モネ
《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》
1874年 
油彩・キャンバス
62.0×81.0cm 
(財)岡田文化財団寄贈


モネ《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》 

 ある作品が美術舘のコレクションとなるまでの経緯は、どれとして同じものはなく、その背景にはそれぞれに魅力的な物語が眠っています。今回ご紹介する一枚もその例に漏れません。

 この作品が三重に入った経緯は、美術館の開館20周年を記念してのことでした。思い返せば、開館当時にも(財)岡田文化財団からシャガールの《枝》を御寄贈いただき、15周年の記念にはダリの《パッラーディオのタリア柱廊》を購入してきました。言わば、作品が美術館の歴史の一里塚の役割を果たしているとも言え、その折々の自分のあり方と重ね合わせることが可能となっています。

 美術品購入と言えば、オークションで華々しく落札するようなイメージをお持ちになる方もいれば、何やら怪しげな一団が極秘に情報を持ち込むサスペンス仕立ての設定をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現実の場は残念ながら非常に地味で、だからこそ、そこに紛れ込む一瞬の驚きと幸運が輝いて見えるといってもいいでしょう。

 作品を購入するときに大切なのはやはりそれを可能にする資金です。そしてそれに負けずに重要視すべきなのは購入者の側の姿勢です。「何を求めているのか」をはっきりさせなければ、美術品の広大な海の中でおぼれてしまうことになりかねません。このことは意外に難しい作業です。なぜなら何かを選ぶと言うことは、何かを捨てると言うことでもあるからです。とても魅力的な作品であっても、こちらの方針と合わないために、別れを告げなければならぬ時も少なからずあるのです。

 モネの作品を購入するにあたり、準備を始めたのは、2001年のことでした。実際に作品が美術館に収蔵されたのは、2003年の秋ですから、2年も前のことになります。西洋絵画を取り扱っている団体や個人に手紙を書いて情報を収集しました。宛先は国内には言うに及ばず、アメリカ、イギリス、スペインと多岐にわたりました。その中からめぼしいものが得られるとさらに交渉を進めていきます。同時にその作品はその画家にとってどのような意味があるのか、当時の美術状況においてどのような位置づけなのか、文献資料を繰り、私たちの求めているものであるのか点検作業を行います。もちろん、良い作品を求めているのは私たちだけではありません。日本はおろか世界の美術愛好者が私たちのライバルです。的確な分析と素早い判断が勝敗を決します。

 3月4日から始まった「コレクション展」では、第1室に三重県立美術館のヨーロッパ絵画を集めました。上で触れたようなこの美術館の「目玉」ともいうべき作品が一堂に会します。近年は作品保護や他館からの貸し出しへの対応などで、これらをまとまって展示することができる機会は、1年に1度あるかないかの状態になっています。ヨーロッパから遠く離れたこの地で、美しい作品たちがいかにして安住の地を見つけるに至ったのか、それぞれの物語に思いをはせて頂ければ、また違った見る悦びが得られるのではないでしょうか?  

(生田ゆき)

友の会だより no.71, 2006.3.25

→作家別記事一覧:モネ

 

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