ごあいさつ
日本の現代彫刻界を代表する保田春彦の初めての回顕展を開催いたします。
保田春彦は1930年、和歌山県に生まれました。東京美術学校で石井鶴三に学び、1958年に渡仏し、パリのアカデミー・グランド・ショーミエールではオシップ・ザッキン教室の研究生として学びました。その後イタリアに渡りローマを中心として活動してきましたが、1968年に帰国、ステンレス・ステイールを使用した抽象彫刻で日本でデビューしました。
10年間のヨーロッパ滞在によって培われた鋭い感性は、情緒的なものを払拭する方向に向かいながら、古代の遺跡や廃墟を発想の源に展開する独自の形態のなかに生きています。70年代以降は、素材に鉄を使って都市を主題とした一連の作品を制作しますが、それらは野外彫刻の分野にまで広がりをみせ、日本をはじめ海外でも高い評価をえています。
今回の展覧会では、最初期の具象彫刻から最新作《聚落を囲う壁》《閉ざされた門》までの保田春彦の全貌を紹介します。緊張感あふれる保田春彦の彫刻世界を堪能していただければ幸いと思います。
末尾になりましたが、展覧会のために貴重な作品をお貸しくださった美術館、並びに所蔵者の皆様、協賛いただいた花王株式会社、こ協力をいただいた南天子画廊、そして本展のために新作を制作し、また資料の提供等に尽力くださった保田春彦氏に深甚なる感謝を表します。
1995年
神奈川県立近代美術館館長
酒井忠康
三重県立美術館館長
酒井哲朗
大原美術館館長
藤田慎一郎
和歌山県立近代美術館館長職務代理者副館長
武部吉宏
美術館連絡協議会事務局長
飯田隆介