ごあいさつ
柳原義達氏は、現代日本の具象彫刻の第一人者として活躍し、高い評価を得ておられます。神戸に生まれた氏は、はじめ日本画を学びましたが、ロダンやブールデルの作品の写真を見て、彫刻家を志しました。東京美術学校で彫刻を学んで、国画会、新制作派協会に発表するようになりましたが、戦後、火災のためそれまでの作品のほとんどを消失する不幸にあいました。1951年、サロン・ド・メ東京展が開催され、そこに出品されたフランスの彫刻作品に大きな感銘を受け、1953年パリに渡って研鑽を重ねました。1957年に帰国して以来、女性像、鴉や鳩などをモチーフにした数多くの作品の制作をすすめています。そうした氏の作品は、自然や生命への深い洞察に裏付けられた、鋭くそして繊細な、緊張感のある優れた造形性を示しています。
三重県立美術館の開館20周年を機会に、このたび、柳原義達氏の初期から最近作まで、彫刻作品70点余り、素描数百点をご寄贈いただきました。当館ではこれらの優れた作品を展示し、県民の皆様をはじめ、広く一般の方々に鑑賞していただくようにしていますが、それとともに、作品集を刊行して、より深く柳原芸術のすばらしさを味わっていただくことと致しました。
最後になりましたが、多大なご尽力をいただきました柳原義達ご夫妻並びに関係の皆様に、心から御礼申し上げます。
2003年11月
三重県立美術館