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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1998 > 作品解説 毛利伊知郎 曾我蕭白展図録

作品解説 毛利伊知郎

2 人物山水花鳥押絵貼屏風
    宝暦期(1751~63)頃
    署名:藤暉雄図/曾我暉雄図/曾我蕭白暉雄図、花押
    印章:「如鬼」(朱文方形円郭印)/「蕭白」(朱文方印)/「曾我氏」(朱文方印)/「曽我暉雄」(白文方印)/「鷲山」(白文方印)
    紙本墨画 六曲一双 各130.8×55.6㎝
    文献:その後四九
    三重県津市 石水博物館

 山水、鳥獣、人物などをアトランダムに取り混ぜた押絵貼屏風。寒山拾得の他、瀟湘八景の部分と思われる山水図なども見られる。各図の配列には規則性がなく、掛幅あるいは押絵貼屏風のために描かれた作品を集めて六曲一双に仕立てた作品と考えられる。この作品は、津市の旧家川喜田家に伝わった屏風だが、作風や落款、印章を見ると、第一回目の伊勢地方滞在の頃に描かれた可能性が高い。


7 寿老人鹿鶴図
    著名:曾我次郎暉雄筆/曾我瀟白暉雄筆/蛇足軒暉雄筆
    印章:「曾我暉雄」(白文方印)/「瀟白」(朱文方印)/「鸞山」(朱文方印)
    紙本墨画 掛幅 各127.3×27.8㎝
    文献:国華952(挿図)、三重練馬三

 津市郊外(芸濃町)の旧家に伝わり、この地方で制作されたと考えられる小品。小形の「曾我暉雄」印に欠損が見られず、また中幅の松や右幅の梅樹などの表現に、豪放な巨木表現の萌芽が見られる点を考慮すると、瀟白29歳から30歳頃に行われた第1回目の伊勢地方滞在の際に描かれた可能性も考えられる。

 鶴は蕭白得意のレパートリーだが、本図はかつて紹介された個人蔵の鶴図屏風(三重練馬四○)中のそれと近く、元来襖であったこの屏風の制作時期を検討する上でも、本図の資料的価値は大きい。


43 酒呑仙人図
    紙本墨画 掛幅 131.0×55.1㎝
    署名:曾我左近次郎暉雄蛇足軒蕭白画之
    印章:「曾我暉雄」(白文方印)/「蕭白」(朱文方印)/「虎道」(白文方印)
    文献:三重練馬二六
    奈良県奈良市 奈良県立美術館

 巨大な酒壺に取り付けた注ぎ口から酒を飲む仙人の姿がユーモラスに描き出されている。現在は「酒呑仙人」と呼ばれているが、主題の典拠等は明らかでなく、描かれている人物が仙人か否かも定かではない。一筆描きのような螺旋状の線で引かれた仙人の上着の輪郭線が特徴的で、人物表現における蕭白の幅広い画技と自由な筆運びを見ることができる。


59 鍾馗と鬼図
    明和年間後半(1768~71)頃
    署名:曾我蕭白筆
    印章:「輝一」(白文方印)
    紙本墨画淡彩 掛幅 102.5×36.0㎝
    文献:渋谷区立松濤美術館
    「-変容する神仏たち- 近世宗教美術の世界」展図録 1995年 図四十三
    三重県四日市市 四日市市立博物館

 邪鬼を払う中国の門神である鍾馗の像は、わが国でも早くから信仰を集めた。この図は、剣を持つ鍾馗、蟻燭をさした梅の枝を捧げ持つ鬼、幸福の象徴である二匹の蝙蝠をモチーフとして描き込んだ図像的にも興味深い鐘馗図。変化に富んだ墨色、ユーモアあふれる鍾馗や鬼の表情などに蕭白独特の人物表現を見ることができる。蕭白の鍾馗像としては、鬼を抱き抱えた図様のボストン美術館本が知られている。


79 横山華山「倣曾我蕭白山水図押絵貼屏風」
     署名:右隻第一扇と左隻第六扇「傲蕭白図 華山」
     印章:「華山」(白文方形聯印)
     紙本墨画 六曲一双 各 132.0×55.8㎝
     文献:その後六三

 横山華山(1784~1837)は京の絵師、岸駒に学び、後に呉春に師事して四条派に転じた。本屏風は、蕭白晩年の作と想定されてきた山水図押絵貼屏風に倣った作品。蕭白の山水図押絵貼屏風については、真筆か否かをめぐって近年問題が提起されており、慎重に取り扱う必要があるが、華山によるこの倣蕭白画は、19世紀前半頃には京都でそれら山水図押絵貼屏風が蕭白画と見なされていたことを示している。蕭白作品の後世への影響が見られる点で、資料的にも興味深い作品である。

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