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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1991 > ごあいさつ 元永定正展図録 1991

ごあいさつ

このたび、三重県立美術館では、(財)岡田文化財団との共催により、三重児上野市出身で、国際的にも注目を集めている画家の一人元永定正の初期作から最新作までを紹介する「元永定正展」を開催致します。

元永定正は、1922年(大正11)11月26日、三重県上野市に生まれました。最初、元永は漫画家を志しましたが、郷里で文展系の洋画家濱邊萬吉に師事して洋画に転向し、裸婦や風景などの具象画を描くようになりました。1952年(昭和27)、30歳の時に神戸市に移り、当時芦屋市展に出品されていた抽象画を見て刺激を受け、六甲山の夜景から想を得た抽象作品などの制作を始めました。

1955年(昭和30)、元永は吉原治良が主宰する「具体美術協会」(GUTAI)に参加し、1971年(昭和46)に退会するまで同会に出品を続けました。その間、赤や緑・黄色などの原色の絵具を流すことによって画面を構成した、アンフォルメル風の、力強い生命感あふれる絵画を精力的に発表しました。また元永は煙を使ったパフォーマンスを行ったり、自然の石を用いたオブジェ風の彫刻や「水」の作品の制作など、ユニークな創作活動を行って「具体」を代表する作家の一人として国外でも認められるようになりました。

1966年(昭和41)に渡米した元永は、ニューヨーク滞在中に、1955年前後の作品で行っていた〈かたち〉の追求を再び行うようになります。その結果は、エアブラシやスプレーの使用とあいまって、大きな作風の変化となってあらわれ、明快な色彩とユーモラスな雰囲気をもつ抽象的な形態による構成を大きな特徴とする作品が制作されるようになります。機知あふれる独特のタイトルがつけられたそれらの作品に共通する軽快な明るさとユーモアは、元永定正独自の世界をつくりだしています。

また元永定正は絵画制作以外に、元永独特の造形感覚がつよくあらわれた数多くの版画や陶製オブジェの制作、さらに椅子やタピストリーのデザイン、絵本の出版も行うなど、幅広い創作活動を続けています。こうした多彩な元永の活動は、1983年(昭和58)の日本芸術大賞受賞など多くの受賞にみられるように、わが国だけでなく海外でも高い評価を得ています。

本展は、こうした元永定正の初期から最近までの絵画作品125点を中心に、ドローイング、版画、椅子、オブジェ、タピストリーなどをあわせて展示し、さらに「具体」時代の「水」の作品も会場に再現して、元永定正の過去から現在に至るまでの全貌に迫ろうとするものです。

最後に、本展開催に当たり貴重な作品をご出品いただきました美術館、ご所蔵家の皆様、協賛いただきましたアサヒビール芸術文化財団をはじめ、ご協力いただきました関係各位にあつくお礼申し上げます。

1991年1月

三重県立美術館 館長 陰里鐵郎
 (財)岡田文化財団 理事長 岡田卓也

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