「三重の三人-浅野弥衛・小林研三・伊藤利彦」展図録(2007)
ごあいさつ
浅野弥衛(1914-1996)、小林研三(1924-2001)、伊藤利彦(1928-2006)の三人は、三重に生まれ、生涯この地を活動の拠点とした作家たちです。ほとんどが白か黒のみの地を引っかいて得られた線が自在に変幻する浅野、明るく穏やかな色彩が童話的なイメージを紡ぐ小林、暗鬱な物質性の強調、観念的な制作の問い直しを経て、箱の中に畳みこまれた晴朗な白のレリーフに達した伊藤と、その作風は全く異なりますが、三人は親交を結んでいました。当館でもそれぞれ回顧展を開催し、そうした機会に作品を収蔵してきましたが、先の2006年11月伊藤氏が逝去されたことを機に、追悼の念をこめ、当館の所蔵品によって三人の活動を振りかえります。当館所蔵作品のみで三人の活動全てを網羅することなどできませんが、この機会に、三人の遺した作品をあらためて見直すことで、三重の地の未来につながる何らかのきっかけになればと期待するものです。
三重県立美術館
2007年3月