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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2008 > 田窪恭治 毛利伊知郎 金刀比羅宮 書院の美 図録

田窪恭治

金刀比羅宮では、平成13年(2001)から「琴平山再生計画」が開始された。この計画は、山内を社殿ゾーン、文化ゾーンなどに分けて、現代にふさわしい姿に金刀比羅宮をリニューアルするものであった。その中心的役割をになったのが、愛媛県出身の美術家・田窪恭治(1949~ )である。この計画を行うにあたり、田窪は「何にも変わらない風景をつくる」ことを基本テーマに掲げた。自然の営みと人為とを調和させて常に新鮮さを失わない風景の創造をめざしていくつかのプロジェクトが行われた。

田窪自身は奥書院の南側に建てられた白書院(新書院)の長さ12間に及ぶ襖と長押に、ヤブツバキをモチーフとした長大な障壁画をパステルで描いている。また、「神椿」と命名された新しい茶所(休憩所)が田窪のデザインによって建設され、その内部に田窪は白書院障壁画と同じヤブツバキを主題とした有田焼の大規模な陶壁を設置した。

田窪恭治は昭和43年(1968)に多摩美術大学に入学、在学中から活動を始めて1970年代のパフォーマンスやオブジェなど実験的な作品を経て、80年代には木や金箔を素材とした立体作品を発表した。その後、1989年から99年にかけて田窪はフランス・ノルマンディー地方に滞在し、廃墟同然となっていたサン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂の再生に取り組み、自身の作品としてこの礼拝堂の内外をリニューアルすることに成功した。

金刀比羅宮白書院、茶所での障壁画制作に、ノルマンディーでの礼拝堂再生の経験が活かされていることはいうまでもない。ノルマンディーの礼拝堂を飾った林檎は、琴平ではヤブツバキに姿を変えて書院と茶所をあでやかに荘厳している。

(毛利伊知郎)

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