ごあいさつ
三重県立美術館では、現代の美術界の第一線で活躍する作家の創造の全体像を紹介する展覧会を毎年開催してきました。このシリーズの一つとして、このたび、一貫して抽象彫刻の世界を展開してきた清水九兵衞の、過去から現在までの姿を紹介する清水九兵衞展を開催します。
清水九兵衞は、1922(大正11)年愛知県に生まれ、最初、東京芸術大学鋳金科在学中から、陶芸の制作で作家活動を始めましたが、1966年頃から、金属の鋳造による彫刻作品の制作に専念するようになります。
1970年頃からは、もっぱらアルミニウムを素材に、形態と空間の関係を一貫して追求してきました。その作品は、知的な構成を主眼にしたものですが、冷たい感触を与えるものではなく、ゆるやかで柔らかい曲線をいかしたその世界には、しばしば日本的な伝統との関連が指摘されています。また、多くの野外彫刻の発表とともに、室内で展示される規模の大きな作品では、建築空間との関係を問いかけてきました。
こうした清水九兵衞の活動は、数多くの受賞にみられるように高い評価を受けてきました。今回の展覧会は、清水九兵衞の初期作から最近作までの彫刻作品、および素描類を展示して、その彫刻家としての活動の全貌を紹介しようとするものです。
最後に、本展開催にあたり貴重な作品をご出品いただきました美術館、ご所蔵家の皆様、さまざまな面でご協力いただきました関係各位にあつくお礼申し上げます。
1992年5月
三重県立美術館長 陰里鐵郎