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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1987 > ごあいさつ 石井鶴三展図録

ごあいさつ

1887年(明治20)東京の仲御徒町に,画家石井柏亭を兄に,日本画家石井鼎湖の三男として生まれた石井鶴三は,はじめ小山正太郎の不同舎で絵画を学び,また高村光雲門下の加藤景雲に木彫の手ほどきをうけました。東京美術学校在学中には,荻原守衛の「文覚」を見て,大きな感動を受け,1911年(明治44)に,第5回文展に「荒川嶽」を出品,入選を果たして,彫刻家として頭角を現しました。

1915年(大正4)には,佐藤朝山の招きによって,日本美術院研究所に入り,中原悌二郎,戸張孤雁,保田龍門らと,しのぎをけずる制作を続け,「俊寛頭部試作」(昭和5年)や,「信濃男座像」(昭和6年)などの,強い力のこもった代表作を発表しました。その作風は,西洋近代の彫塑表現にたいする理解とともに,東洋的な風格を示しており,1973年(昭和48)87歳で没するまで,登山や,相撲,能狂言など,幅広い分野に興味を持ちつつ,息の長い制作活動を行い,日本の近代彫刻史に重要な足跡をのこしました。

また,石井鶴三は,彫刻だけでなく,油彩画,水彩画,挿絵,版画など多くの分野の作品を手がけました。なかでも,中里介山の『大菩薩峠』や吉川英治の『宮本武蔵』の挿絵は,それまでの浮世絵系の挿絵の概念に大きな変革を起こし,近代の挿絵界に確固たる地位を築きました。

今回の展覧会は,石井鶴三の生誕100年を記念し,彫刻82点,油彩画39点,水彩画22点,屏風2点,小説挿絵9点,素描10点,版画18点の計182点によって,幅広く奥行きの深い石井芸術の世界を紹介するものです。

本展を開催するにあたり,全面的なご協力をいただきましたご遺族をはじめ,貴重な作品を快くご出品くださいました美術館,博物館,所蔵家の皆様,ならびに協賛の花王株式会社,ご支援を賜りました関係各位に厚くお礼申し上げます。

1987年

主催者

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