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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1988 > ごあいさつ 飯田善國展図録

ごあいさつ

このたび、三重県立美術館・目黒区美術館・京都国立近代美術館は共同企画で、「つながれた形の間に─飯田善國展」を開催いたします。

1923年、栃木県に生まれた飯田善國は、慶応義塾大学を卒業後、東京芸術大学で油彩画を学び、1956年に渡欧、67年に帰国するまで、ローマ、ウィーン、西ベルリンを制作の拠点にして活動し、ヨーロッパで高い評価を得た彫刻家です。帰国後の68年には、「現代日本美術展」で神奈川県立近代美術館賞を、「神戸須磨離宮公園現代彫刻展」で大賞を受賞して、一躍日本の新しい世代の抽象彫刻を代表する彫刻家となりました。

もともと絵画を学ぶ目的で渡欧した飯田善國は、ローマで彫刻家のペリクレ・ファッツィーニに師事したことと、ミュンヘンでヘンリー・ムアの大回顧展を見た衝撃から、本格的に彫刻家としての道を歩みはじめます。61年から65年頃には、主に人体をモティーフにした作品、『HITO』シリーズを制作、また、65年から帰国する67年までは、『COSMOS』の連作に代表される彩色彫刻を多く制作しています。帰国後の飯田善國の作品は、ステンレススティールを素材にして鏡面効果を狙い、形態に動きと時間性を与えた、モビールが中心となっていると言えます。詩作を通して新たな言語世界の可能性を追究する飯田善國は、その彫刻作品においても、単なる造形的な営為に終わることのない、詩学として、また存在論としての芸術行為を実践する稀有な彫刻家です。

本展は、62年制作の『HITO』シリーズから、ステンレススティールと多彩なナイロン・ストリングを巧みに組み合わせた多面体シリーズに最新作10点を加えた、約45点の彫刻作品と、彫刻を手がけ始めた時期から最近までの約120点の素描、及び版画作品『クロマトポイエマ』を展観し、彫刻家飯田善國の全貌を示そうとするものです。

最後になりましたが、本展開催にあたり、貴重な作品をご出品いただきました美術館及び所蔵家各位をはじめ、ご協力いただきました関係者各位に、心からお礼申し上げます。

1988年

三重児立美術館長 陰里鐵郎
目黒区美術館長 加藤貞雄
京都国立近代美術館長 小倉忠夫

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