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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1988 > あいさつ ドガ展図録 1988

あいさつ

このたび,ブラジル,サンパウロ州と三重県との姉妹提携15周年を記念し,サンパウロ・アシス・シャトーブリアン美術館所蔵の作品を核にして,「ドガ展」を開催することになりました。

油彩やパステルで「踊り子」を描いたエドガー・ドガ(1834-1917)は,フランス印象派の傑出した画家としてあまりにも高名です。人物や動物の瞬間の動きを正確に捉える卓抜な素描力は,残された1500点以上もの膨大な作品群から,明瞭に見てとることができます。またドガの絵画の斬新な構図は,浮世絵を中心とする日本美術の影響を示すものとして,近年いよいよ関心が高まりつつあります。

パリの裕福な家庭に生まれたドガは,青年時代にエコール・デ・ボザールでアカデミックな絵画の勉強を始めましたが,授業には関心をもたず,新古典主義の巨匠アングルを敬愛して制作に励みました。その強い影響と古典文学などに対する深い教養に支えられて,初期には重厚な歴史画や肖像画を描いていますが,やがて彼の本領である,蹄り子,洗濯女,音楽家,競馬,浴女,それにカフェの情景など,同時代の詩人ボードレールが提唱した,いわゆる「近代生活」のテーマを,鋭い線描と鮮やかな色彩によって扱うようになります。彼の絵画は印象派展に参加する頃から徐々に色彩の明るさを増していきましたが,モネやピサロなどとは異なって,風景画をほとんど描かず,日常の風俗を冷徹な眼で追求して表現しました。またドガは,モノタイプのパステル画や版画,それに転写法によるモティーフの配置など,絵画の技法に関しては,今もなお謎となっている複雑な手法を駆使し,驚くべきほど多様多彩な作品を制作しました。晩年に視力が衰えはじめてからをも絵画のみならず、踊り子や馬をモティーフにして,蝋や粘土を使った150点以上もの塑像を制作しました。それらの中の約半数は失われましたが,現在,ドガの死後に鋳造された74点のブロンズ像が残されております。

今回の展覧会は,ドガの全彫刻74点を含めて,ヨーロッパ,アメリカ,ブラジルをはじめ世界各地の美術館が所蔵する油彩,パステル,素描など計約160点によって,ドガの才気あふれる多彩な活動を紹介するものです。

本展開催にあたり,ご協力いただきましたサンパウロ・アシス・シャトーブリアン美術館をはじめ,ブラジル政府,駐日ブラジル大使館,サンパウロ州政府,それに国内外の所蔵家の皆様ならびに関係各位に厚くお礼申し上げます。

1988年11月

三重県立美術館
(財)岡田文化財団
中日新聞社

ページID:000056435