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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 1998 > ごあいさつ レオノーラ・キャリントン展図録

ごあいさつ

20世紀の重要な芸術運動であるシュルレアリスムは,近代の合理的理性的思考に制約されてきた無意識の世界や幻想のもつ力に目をむけ,芸術家の想像力を解放したという点で革命的な運動でした。また一方では従来のどの芸術運動にも例をみないほど多くの女性画家を輩出しました。レオノーラ・キャリントンは,フリーダ・カーロ,レメディオス・バロ,レオノール・フィニ,ドロテア・タニングら女性シュルレアリストの中でも最も個性豊かな芸術家です。

レオノーラ・キャリントンは1917年,イギリス,ランカシャーの資産家の家に生まれました。幼い頃から絵を描くことに強い情熱をもっていたキャリントンは,1936年両親の反対を押し切ってロンドンの美術学校,アメデー・オザンファン・アカデミーに入学し,正式に絵画を学びます。そして翌年,マックス・エルンストとの劇的な出会いを通じて,パリのシュルレアリストグループに加わり,エルンストやブルトンなどに代表されるシュルレアリストとの交流をもちながら数々のグループ展に出品。自己の芸術を開花させました。また彼女の創作活動は絵画に留まらず,小説にもおよび,『恐怖の館』,『卵形の貴婦人』などの短編集が出版されています。第二次世界大戦を境に,当時多くの芸術家がそうであったように,ヨーロッパを後にしたキャリントンは,ニューヨークを経て,1942年にメキシコ・シティに渡りました。以後それまでのシュルレアリストたちの影響を離れ,アイルランド人である母の祖先ケルト人に伝わる神話やユダヤ教の神秘主義カバラ,それにメキシコ神話など古代の神話や民間伝承などからインスピレーションを受けた物語性の強い独自の世界を築き,80歳になる現在もメキシコを拠点に旺盛な創作活動を続けています。

本展は,日本人のメキシコヘの移住100周年を記念して開かれるものです。開催にあたりご出品いただきました各所蔵家をはじめ,ご後援をもいただきました日本・メキシコ両国の外務省,メキシコ国立文化芸術審議会,メキシコ国立芸術院,企画協力をいただきましたガレリア・デ・アルテ・メヒカーノ,専門的立場より貴重な助言をいただいたルイス=カルロス・エメリッチ氏,その他ご協力を賜りました関係各位に深甚な謝意を表します。

主催者

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