あいさつ
わが国の近代絵画はここ1世紀ほどの間に芽ぶき,開花し,結実いたしました。とくにこの半世紀の美術思潮は非常な速度で変転して,具象絵画より抽象絵画に広がり,さらには形而上学的な概念美術やグラフィック・デザインを含めた映像美術へと多様な展開をみせております。
一方,多くの功績を残しつつも,今日の公募団体は年を重ねて巨大化するうちに,創立期の開拓者精神を失い,美術運動体としての役割から遠のいてしまったと,しばしば指摘されております。そうした今日の時点において,ここにあらためて絵画における具象的イメージが何であるかを考え,21世紀へ向かう具象絵画の可能性を探求する必要があろうかと思われます。現状を打破して新しい具象絵画をもたらしたいとの作家の意欲をくみ,美術館と実作者との連帯という新しい視点から,この切実な問題に挑戦してみる意図の下に本展を開催する次第であります。
主催者