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美術館 > 刊行物 > 展覧会図録 > 2001 > コルダ、モーロ 生田ゆき アートになった動物たち展図録 2001

モーロ・コルダ
Mauro CORDA

1960年、ルルド(フランス)ー

20《雄牛
Le Taureau

1990年

ブロンズ
Bronze

26×20×45cm

作家からの貸与
Pret de l'Artiste

21《ミノタウロス
Le Minotaure

1990年

ブロンズ
Bronze

41.5×24.5×17cm

作家からの貸与
Prêt de l'Artiste


1960年、スペインとフランスの国境に横たわる、ピレネー山脈の麓ルルドに生まれました。16歳の時、パリ東部のランス美術学校に入学しますが、彫刻に対する興味と関心が芽生え、3年後、一つに専念しようと学校を中退し、自分のアトリエを構えるようになります。その成果が見事に実を結び、パリの美術学校の選抜試験で一等賞を受賞するまでになります。1981年に彫刻家ジャン・カルドのアトリエで修業を積み、研究と創作活動に旺盛に励む日々でした。1985年に教育省から奨学金をうけ、2年間マドリッドの「ヴェラスケスの家」で制作を行うようになります。この時集中的にスペインの芸術的な風土に触れたことは、コルダの中に、生まれ故郷にも通じる、二つの国の文化の混合が生み出す魅力をかき立ててくれたに違いありません。その後1987年からは活躍の舞台をパリに移しています。

コルダの作品は主要なものは人物像です。筋肉の起伏を丹念に再現し、見る者に触覚的な感覚を呼び覚ましてくれます。人物たちはあまり激しい動きをとりません。見かけの派手な印象ではなくて、彼は人間の体、肉体というものに、特に関心を向けていたことが分かります。

《ミノタウロス》はギリシア神話に出てくる頭が牛で体が人間の怪物です。かれは長い間迷宮ラビュリントスに棲み、毎年少年少女たちを生け贄にしていました。奇怪な姿をした恐ろしい生き物であるのにも関わらず、昔から多くの芸術家たちはミノタウロスを自分の作品の中に登場させてきました。その中でもピカソが自分をこのモンスターに見立てた作品が有名です。

実在の動物の《雄牛》と神話の怪物《ミノタウロス》。どこか共通点はあるのでしょうか。《雄牛》はずいぶん形が単純化されて、頭部は逆三角形と、ひょろっと突き出た角だけです。しかしわずかに傾けられた頭部から、この牛がいま獲物にねらいを定めている、緊張みなぎる一瞬であることが分かります。《ミノタウロス》は体は荒々しい凹凸が目立ち、両脇を壁に挟まれて苦しげにもがいているかのようです。実はコルダはもう一体《ミノタウロス》を制作しています。そこでは《雄牛》の頭と実際の人間のようになめらかな体が合体されています。それに比べると、今回のミノタウロスはなんと苦しげで、なんと寂しげななのでしょう。人の体をそのまま借りてきた時よりも、私たちと同じような感情をより感じさせてくれます。

(生田ゆき)


参考文献

MAURO CORDA:Musée Pyrénéen Château Fort de Lourdes,30 Juin-15 Aout 1996.
Mauro Corda:Sculptures en bronza:Venice,Galleria del Leone-F.M.R.,29 aout-30 octobre 1996.

ページID:000056340