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美術館 > 展覧会のご案内 > 企画展 > 2002 > 光の間 制作ノート 秋岡美帆 欅しんぶん137、2002.7.21

光の間 制作ノート

   風ふきて
   水面にゆるる
   影ひろぐ

山道を通りぬけて森に入る。光と影に包まれた静寂。こぼれる緑と透き通った青。茶色にのびる幹や枝々。芳しい土と緑の香りに包まれ、肌に感じる清涼感。小鳥のさえずりと小さな生き物達のささやきに満ちあふれたやさしい場所。吹き抜ける風が木立を揺らし、風景の色をぬりかえてゆく。風に誘われ、思わずシャッターをきる。包み込まれていたはずの大きな自然は小さなフィルムの世界にスッポリとおさまる。

手にのる小さな珠玉の世界。35ミリの写真映像はまさに手のひらの宇宙。小さな宝石のような領域。光に照らされるポジスライドの色は光の色そのもの。この光の国の贈り物を和紙という不透明な場所に大きく再現する。再現としてではなく別の質へと還元し表現へと変調してゆく。光の透過から光の反射へ。小さな場所から大きな場所への変換。鉱物的な色と輝きをもった透明な色の濃度は微細な赤と青と黄と黒の小さな点となって和紙の上にゆるやかに吹き付けられてゆく。

移し換えられてゆく中で包み込まれていた大きな自然を取り戻し、光の透明感を呼び戻し、新たな意味を見い出してゆく。

   凪の夕
   鏡のごとく
   沈みをり

墨に流したような空。漆黒の夜空。闇の中に音を訪ねる。

都会の喧噪。眠らない夜の町をのがれ、静寂の中にあるもの、静かなやさしい一時を探す。

   なほのこる
   やさしさにあり
   わが花や

2002.7.20   秋岡美帆

欅しんぶんno.137 2002.7.21

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