あいさつ
三重県立美術館では,一昨年,開館一周年記念展として明治初期から昭和に至る近代日本画の流れを展望する“近代日本画の歩み展”を開催いたしましたが,このたび,これを承ける展覧会のひとつとして,“日本画の現在(いま)をみる-戦後日本画における古典と現代”展を開催することになりました。
周知のように戦後の日本画は,終戦直後の危機的な混迷から立ち直り,ふたたび日本美術の重要な一翼を担うまでに進展してまいりました。そうしたなかから,さまざまな立場や視点からの創作活動が生まれ,着々と実践されてまいりました。このたびの展覧会は,そのような多様な現代日本画の状況のなかから,これまで続いてきた伝統的な様式や技法を見直して,日本画の現代絵画としての立場から中国や日本の古典絵画の主題,様式,技法を捉えなおし,現代的視点から見た古典と現代絵画とのかかわりを追求することから再創造に出発した作家,および,20世紀の欧米の先端的な絵画の動向を視野に捉えながら,日本画の伝統にこれまでなかったグローバルな視点から現代的な日本画を再創造しようとした作家,石本正,岩橋英遠,片岡球子,加山又造,工藤甲人,小松均,高山辰雄,平山郁夫,横山操の九氏の作品65点で,戦後日本画の軌跡の一端を辿る展覧会として企画いたしました。
本展開催にあたり,本展趣旨をお汲み取りの上,快くご協力をいただきました出品作家の方々,貴重な作品をご出品くださいました所蔵家の皆様,並びにご協力賜りました関係各位に厚くお礼申し上げます
1986年1月
三重県立美術館
(財)岡田文化財団
中日新聞社