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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > おすすめの美術館 > おすすめの美術館(4) 原舞子 学芸室だより

学芸室だより

お題:「おすすめの美術館」 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ)

2010年1月(第4回) 担当:原舞子

「ミュージアム・マイレージポイント」サービスがあったらいいのに。

そんなことを考えたのは、2009年秋、展覧会調査のためヨーロッパに1ヶ月滞在していた折のことでした。

 

 

 イタリア、ドイツ、スイス、フランスを巡る旅。しかも毎日美術館を訪ねて歩く。こう書くと、「優雅でいいわね~」とのお声も頂戴しそうですが、歩きすぎて靴はぼろぼろ、作品を見すぎて頭はパンクしそうになる、「充実」した修行のような日々であったこともつけ加えておきます。

日頃の旅では比較的荷物は少ない方だと自分では思うのですが、さすがに冬場のヨーロッパに1ヶ月滞在す・驍アとを考え、大きめのスーツケースなぞ持って行くことになりました。

 毎日荷物を引きずって移動するのは大変なので、拠点となる街のホテルに滞在し、毎日電車やバスを乗り継いで近郊の街々へと出かけていたのですが、ときには片道2時間近くかかる街の美術館へ行き、調査をし、そのまま来た道を戻る、ということを繰り返しているうちに、「ああ、今日は何マイル貯まったかな?」と夢想するようになりました。

 残念ながらマイレージポイントは貯まりませんでしたが、見聞といいますか、ある種の学芸員基礎体力の様なものは身に付いたのかもしれません(そう願います)。

旅の終盤、訪れたのはスイスのバーゼルでした。その日はあいにくの雨。11月終わりのスイスの空気はとても冷たく、今夜は雪になるだろうか(実際、宿泊先のベルンは雪が積もり、ベルンに戻る列車は1時間遅れたのでした)と思いながら、トラムに揺られバスに乗り換えます。

 

スイスからドイツへ。街の中心からたった20分ほどで国境をこえるという感覚は、島国・日本に住む私には珍しくて不思議な気分でした。通貨もスイス・フランからユーロに変わります。

バーゼル市内の広場

 

バーゼル市内の広場

 バスを降りるのはヴィトラという停留所。家具がお好きな方ならもうおわかりでしょう。チャールズ&レイ・イームズ、ジャン・プルーヴェ、ジャスパー・モリソン…世界的なデザイナー、建築家らがデザインした家具を世に送り出しているメーカーです。このヴィトラ本社工場があるのが、バーゼル近郊、ドイツのWeil am Rheinという街です。

 

 ヴィトラの工場敷地には、フランク・O・ゲーリー、安藤忠雄、ザハ・ハディド、アルヴァロ・シーザ、ニコラス・グリムショーからバックミンスター・フラーまで、有名建築家の建築が所狭しと並んでいます。私が訪ねたときも、北京オリンピックのスタジアム、通称「鳥の巣」などで知られるヘルツォーク&ド・ムーロンの新しい建物が建設中でした。とても工場敷地には見えません。

建設中のヘルツォーク&ド・ムーロン

 

建設中のヘルツォーク&ド・ムーロン

 デザイン・ミュージアムとして展示を行っているのは、フランク・O・ゲーリー設計の建物です。デザインや家具に関する展示を行っています。デザイン・ミュージアム以外の場所-例えばザハ・ハディド設計の消防署や安藤忠雄設計のカンファレンス・センターなど-を見学するには、2時間の建築見学ツアーへの参加が必要です。ドイツ語または英語で説明をしてもらえます。

 

 私はこれらの建築を巡る2時間ツアーに参加しました。集合場所にはポルトガル人の家族と日本人の青年と私。ドイツ人の女性ガイドと一緒に雨の中、傘とカメラを手にヴィトラの敷地を巡ります。

フランク・O・ゲーリー

 

フランク・O・ゲーリー

 

左奥に安藤忠雄

 ポルトガル人家族は、彼らの国のスター建築家、アルヴァロ・シーザがお目当て。ただしそこは工場として使用しているため、外からの見学のみとなりました。ザハ・ハディドとバックミンスター・フラー、フランク・O・ゲーリー、安藤忠雄は内部も見学します。ヴィトラのショールームも見学し、パントンやイサム・ノグチの椅子に座ってみんなではしゃいでしまいました。

アルヴァロ・シーザ

 

アルヴァロ・シーザ

 

雨の日はブリッジが降りて屋根になります
何かが柵に囲われています。

 

何かが柵に囲われています。

象にえさを与えないでください」?

「象にえさを与えないでください」?

イームズ・エレファントでした。

イームズ・エレファントでした。

 
ヴィトラといえばミニチュア椅子

 

ヴィトラといえばミニチュア椅子
ショールーム内部の様子

 

ショールーム内部の様子
イームズの椅子の展示

 

イームズの椅子の展示
ベルンのホテルの部屋にもイームズ

 

ベルンのホテルの部屋にもイームズ

 2時間のツアーの間、少人数だということもあり、ガイド、参加者はわいわいしゃべりながら建築巡りをしました。日本語を教えてほしい、君はやっぱりアンドウの建築を見に来たのか、スシの作り方は知っているか、など。一番困ったのは、「畳」ってなんだという質問。普段美術館で行うギャラリートークとは違い、実物が目の前にないのに説明をすることに少々戸惑いました。

安藤忠雄のカンファレンス・センター内部

 

安藤忠雄のカンファレンス・センター内部

 「建築のミュージアム」と呼ばれるほど、有名建築家による建築が立ち並ぶヴィトラですが、その機能はオフィス、工場ですから、ミーティングをしている人もいれば、大きなトラックが何度も往来していたり。その様子もまた、とても興味深かったです。

 バーゼルとその近郊にはいくつもの美術館やギャラリーがありますし、街中にも素晴らしい建築が数え切れないほど立ち並んでいます。そこを見てまわるだけでも時間は足りないくらいですが、少し遠足気分を味わいたい方にはぜひおすすめしたい「美術館」です。

 

 

 

Vitra Design Museum

ヴィトラ・デザイン・ミュージアム

  

Charles-Eames=Str. 1

D-79576 Weil am Rhein

 

 

http://www.design-musum.de/

ザハ・ハディドの消防署(旧)内部

 

ザハ・ハディドの消防署(旧)内部
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