学芸室だより リニューアル版
学芸員を扱った私のお薦め本: さがらあつこ・文、さげさのりこ・絵 『月刊たくさんのふしぎ140号 美術館にもぐりこめ!』 1996年 福音館書店 |
学芸員の仕事場:学芸室
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しかし、美術館の性格や規模、学芸員の気質の違いなどによって、仕事内容や方法は異なります。そこで、次回からは三重県立美術館学芸員の仕事の実態を紹介していきたいと思います。今のところ、展覧会準備の流れにそって、調査研究、出品交渉、原稿執筆と校正作業、集荷返却作業、クーリエ(作品随行)、展示作業、教育普及、作品保存などのテーマを予定しています。もちろん、学芸員の仕事はこれだけではありませんし、社会や美術館の変化に応じて仕事の内容や方法も変わっていきますが、当面は学芸員の基本的な仕事をご紹介します。
また、学芸員の仕事は個人プレーのものばかりではありません。むしろ他のスタッフと協力しながら進める仕事の方が多いといえるでしょう。学芸員同士はいうまでもなく、経理や庶務担当職員、警備員、展示室の案内と監視スタッフ、設備管理技術者、清掃スタッフ、美術館ボランティアなど美術館にいるスタッフ、あるいは美術品輸送会社、印刷会社等々、外部の関係者たちとも協力しないと、学芸員が良い仕事をすることはできません。将来機会があれば、そうした学芸員以外の美術館関係の仕事も紹介したいと思います。近年「仕事」をテーマとする出版物(例えば、村上龍『13歳のハローワーク』2003年 幻冬舎)や放送番組(NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』、『あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑』など)が話題になることが少なくないように思います。また、インターンシップとか職場体験学習も盛んに行われるようになりました。このように、仕事や労働が頻繁に取り上げられるのは偶然でないような気がします。現に働いている人、これから世に出ようとする若い人たちをはじめ、皆が仕事とか労働の意味を気に掛けていることの現れではないかと思います。この「学芸室だより」で学芸員の仕事を紹介することになったのも、そうした現象と無関係でないかもしれません。
美術館学芸員は、社会全体の中では非常に零細な職種です。しかし、このコーナーを通じて「世の中にはこんな仕事をしている人がいるんだ。展覧会開会までにこんな仕事があるのか」ということを少しでも多くの方々に知っていただけたら、これ以上の喜びはありません。では、次回をどうぞお楽しみに。乞う、ご期待!