常設展示1988年度【第2期展示】 1988年6月28日(火)~9月25日(日)
第1室 日本近代洋画の歩み
工部美術学校のイタリア人画家フォンタネージに指導を受けた浅井忠は、1889年(明治22)川村清雄らと我国最初の洋画団体「明治美術会」を創設し、日本の近代洋画を模索し始める。1893年(明治26)フランスから帰国した黒田清輝と久米桂一郎は「白馬会」を結成したが、彼らのコランに影響を受けた外光派風の明るい画面は、日本の洋画界を一新させてゆく。また満谷国四郎や中村不折は、パリで師事した画家ローランすの堅実な写実主義を学び、「太平洋画会」の展覧会でその成果を発表していった。
文部省美術展覧会が開設された明治40年代に入ると、『白樺』や『スバル』などの文芸雑誌によって後期印象派やフォーヴィスムなどが紹介され、萬鉄五郎、岸田劉生、中村彝、村山槐多など大正期に活躍した多くの画家は、内面の感情を強く表現した作品を制作している。
作家名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材質 |
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川村 清雄 | (1852-1934) | ヴェネツィア風景 | 1880 | 油彩・紙 |
浅井 忠 | (1856-1907) | 小丹波村 | 1893 | 油彩・キャンバス |
黒田 清輝 | (1866-1924) | 雪景 | 1919 | 油彩・板 |
久米桂一郎 | (1866-1934) | 秋景下図 | 1895 | 油彩・キャンバス |
中村 不折 | (1866-1943) | 裸婦立像 | 1903 | 油彩・キャンバス |
藤島 武二 | (1867-1943) | ローマ風景 | 1908 | 油彩・板 |
藤島 武二 | (1867-1943) | 朝鮮風景 | 1913 | 油彩・キャンバス |
藤島 武二 | (1867-1943) | 海(日の出) | 1931 | 油彩・キャンバス |
岡田三郎助 | (1869-1936) | 岡部次郎像 | 1898 | 油彩・キャンバス |
満谷国四郎 | (1874-1936) | 裸婦 | 1900 | 油彩・キャンバス |
青木 繁 | (1882-1911) | 自画像 | 1905 | 油彩・紙 |
青木 繁 | (1882-1911) | 芙蓉図 | 1905 | 油彩・板 |
萬 鉄五郎 | (1885-1927) | 木の間よりの風景 | 1918 | 油彩・キャンバス |
中村 彝 | (1887-1924) | 髑髏のある静物 | 1923 | 油彩・キャンバス |
小出 楢重 | (1887-1931) | パリ・ソンムラールの宿 | 1922 | 油彩・キャンバス |
清水 登之 | (1887-1945) | 蹄鉄 | 1925 | 油彩・キャンバス |
安井曾太郎 | (1888-1955) | 裸婦 | 1910 | 油彩・キャンバス |
岸田 劉生 | (1891-1929) | 自画像 | 1917 | クレヨン・コンテ・紙 ※ |
岸田 劉生 | (1891-1929) | 麦二三寸 | 1920 | 油彩・キャンバス |
須田国太郎 | (1891-1961) | 信楽 | 1935 | 油彩・キャンバス |
前田 寛治 | (1896-1930) | 裸婦 | 1928 | 油彩・キャンバス |
村山 槐多 | (1898-1919) | 自画像 | c.1914-15 | 油彩・キャンバス |
村山 槐多 | (1898-1919) | 信州風景(山) | 1917 | 木炭・紙 |
佐伯 祐三 | (1898-1928) | サンタンヌ教会 | 1928 | 油彩・キャンバス |
岡 鹿之助 | (1898-1978) | 廃墟 | 1962 | 油彩・キャンバス |
荻須 高徳 | (1901-1986) | 街 | 1929-30 | 油彩・キャンバス |
脇田 和 | (1908- ) | 鳥と横臥する裸婦 | 1955 | 油彩・キャンバス |
中谷 泰 | (1909- ) | 煤煙 | 1957 | 油彩・キャンバス |
ジョルジュ・ビゴー | (1860-1927) | 日本素画集(クロッキ・ジャポネ) | 1886 | エッチング・紙 |
戸張 孤雁 | (1882-1927) | 虚無 | 1920 | ブロンズ |
中原悌次郎 | (1888-1921) | 石井鶴三氏像 | 1916 | ブロンズ |
中原悌次郎 | (1888-1921) | 若きカフカス人 | 1919 | ブロンズ |
第2室 横山操「瀟湘八景」と戦後の日本画
「瀟湘」とは中国江南の名勝地、洞庭湖に注ぐ二川、瀟水と湘水との合流地域をさす呼称とされるが、洞庭湖中の瀟湘の浦付近の呼称ともされ明確ではない。画題としての瀟湘八景は特定の地をさすものではなく、湿潤で風光明眉な江南の景観をかりに8ヶ所に定めて描いたもので、北宋の文人画家宋迪がはじめて描いたと伝えられる。現存する古い作例としては南宋末の伝牧谿筆のものが有名である。
日本でも、室町時代以降たびたび描かれ、狩野元信、狩野山楽らの作品が知られ、また近代にはいっこても橋本雅邦などによってこの画題は描きつづけられ、特に1912年(明治45)の文展には横山大観、寺崎廣業の瀟湘八景が発表され注目された。横山操の瀟湘八景は近代的な造型感覚を基礎に、たらしこみなど水墨画の伝統技法を駆使してダイナミックな画面をかたちづくり、瀟湘八景の歴史に新たな1頁を書き加えたものである。
作家名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材質 |
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横山 操 | (1920-1973) | 瀟湘八景 1 平沙落雁 2 遠浦帰帆 3 山市晴嵐 4 江天暮雪 5 洞庭秋月 6 瀟湘夜雨 7 烟寺晩鐘 8 漁村夕照 |
1963 | 紙本墨画 |
斎藤 清 | (1907- ) | 会津の家 会津の冬(2) |
1972 | 紙本墨画著色 |
1972 | 紙本墨画 | |||
工藤 甲人 | (1915- ) | 曠野の鴉 | 1962 | 紙本著色 |
第3室 ヨーロッパ近代の絵画
モネやピサロら印象派に代表される、19世紀後半の革新的な美術運動は、パリを中心に展開したが、世紀末から20世紀初頭にかけては、その街を訪れた外国人画家が重要な仕事をしている。ボヘミア出身のミュシャ、ノルウェーのムンク、ロシアのカンディンスキーやシャガールもまたパリで活躍した画家であった。そうした爛熟した国家都市パリにあって、藤田嗣治は日本の伝統的な絵画技法を応用し、独自の画風を確立してゆく。
作家名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材質 |
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フランシスコ・デ・ゴヤ | (1746-1828) | 版画集・戦争の惨禍 | 1863 | エッチング・紙 |
ウィリアム・ブレーク | (1757-1827) | ヨブ記 | 1825 | エッチング・紙 |
シャルル・メリヨン | (1821-1868) | プチ・ポン | 1850 | エッチング・紙 |
シャルル・メリヨン | (1821-1868) | ノートルダムの給水塔 | 1852 | エッチング・紙 |
シャルル・メリヨン | (1821-1868) | 塔・医学校通り | 1861 | エッチング・紙 |
ロドルフ・ブレスダン | (1822-1885) | 善きサマリア人 | 1861 | リトグラフ・紙 |
ロドルフ・ブレスダン | (1822-1885) | 鹿のいる聖母子 | 1885 | リトグラフ・紙 |
カミーユ・ピサロ | (1831-1903) | 農夫モロン親爺 | 1879 | エッチング・紙 |
カミーユ・ピサロ | (1831-1903) | 鋤で耕す農婦 | 1890 | エッチング・紙 |
クロード・モネ | (1840-1926) | ラ・ロシュブロンドの村 | 1889 | 油彩・キャンバス |
アルフォンス・ミュシャ | (1860-1939) | ジョブ(ポスター・大) | 1898 | リトグラフ・紙 |
エドヴァルト・ムンク | (1863-1944) | マイヤー・グレーフェ・ポートフォリオ | 1895 | エッチング・紙 |
ワシリー・カンディンスキー | (1866-1944) | 小さな世界 | 1922 | リトグラフ・木版画・紙 |
ジョルジュ・ルオー | (1871-1958) | 受難(パッション) | 1939 | リトグラフ・紙 |
藤田 嗣治 | (1886-1968) | 猫のいる自画像 | c.1927 | 油彩・キャンバス |
藤田 嗣治 | (1886-1968) | ラマと四人の人物 | 1933 | 水彩・紙 |
マルク・シャガール | (1889-1985) | 枝 | 1956-62 | 油彩・キャンバス |
マルク・シャガール | (1889-1985) | 版画集・サーカス | 1967 | リトグラフ・紙 |
ジョアン・ミロ | (1893-1985) | 女と鳥 | 1968 | 油彩・キャンバス |
ジョアン・ミロ | (1893-1985) | アルバム13 | 1048 | リトグラフ・紙 |
M.C.エッシャー | (1898-1972) | 秩序とカオス | 1950 | リトグラフ・紙 |
M.C.エッシャー | (1898-1972) | 物見の塔 | 1958 | リトグラフ・紙 |
オーギュスト・ロダン | (1840-1917) | 化粧する女 | ブロンズ ※ | |
アントワーヌ・ブールデル | (1861-1929) | 風の中のベートーベン | 1904-1908 | ブロンズ ※ |
アリスティード・マイヨール | (1861-1944) | 歩むマリー | c.1930 | ブロンズ ※ |
磯崎 新 | (1931- ) | モンロー・チェアー | 1974 | 樺・天然セダー皮・ラッカー |
ギャラリー・ロビー(彫刻・工芸・現代美術)
作家名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材質 |
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片山 義郎 | (1908- ) | 横向きに座る婦人 | 1976 | 鉛筆・紙 |
平井 憲迪 | (1915-1982) | 女 | 1979 | 油彩・キャンパス |
菅井 汲 | (1919- ) | 無題 | 1959 | 水彩・墨・紙 |
菅井 汲 | (1919- ) | 無題 | 1958-60 | リトグラフ・紙 |
小野木 学 | (1924-1975) | 版画集・風景 | 1974 | シルクスクリーン・紙 |
加納 光於 | (1933- ) | 版画集・稲妻捕り | 1977 | リトグラフ・紙 |
今村 幸生 | (1935- ) | ゼノン飛翔86099 | 1986 | 油彩・キャンパス |
若林 奮 | (1936- ) | 大気中の緑色に属するもののためのデッサン | 1982 | 鉛筆・紙 |
高松 次郎 | (1936- ) | 版画集・水仙月の四月 | 1984 | シルクスクリーン・紙 |
オシップ・ザッキン | (1890-1967) | ヴィーナスの誕生 | 1930 | ブロンズ |
柳原 義達 | (1910- ) | 黒人の女 | 1956 | ブロンズ |
佐藤 忠良 | (1912- ) | 円い椅子 | 1973 | ブロンズ |
佐藤 忠良 | (1912- ) | 賢島の娘 | 1973 | ブロンズ |
浅野 弥衛 | (1914- ) | 作品 | 1986 | 木・オイルスティック |
多田 美波 | (1924- ) | 曙 | 1982 | テラコッタ・ステンレス板 |
澄川 喜一 | (1931- ) | そぎとそり | 1975 | 木 |
江口 週 | (1932- ) | 漂流と原形 | 1981 | 木 |
若林 奮 | (1936- ) | 中に犬Ⅱ | 1968 | 鉄 |
瀧川 嘉子 | (1937- ) | 境―No.6―1986 | 1986 | 板ガラス |
小清水 漸 | (1944- ) | 作業台 水鏡 | 1981 | シナ合板・ウレタン塗装 |
吉村 寿夫 | (1948- ) | RelationⅣ | 1987 | アルミヒドロ合金 |
屋外彫刻
作家名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材質 |
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ジャコモ・マンズー | (1908- ) | ジュリアとミレトの乗った大きな一輪車 | 1973 | ブロンズ |
湯原 和夫 | (1930- ) | 無題 | 1982 | 鉄・ステンレス |
井上 武吉 | (1930- ) | my sky hole 82 | 1982 | 鉄・ステンレス |
井上 武吉 | (1930- ) | my sky hole 85-6 | 1982 | 鉄 |
田畑 進 | (1944- ) | NOKOSARETA―KATACHI | 1082 | ステンレス・黒御影 |
梶 滋 | (1951- ) | 円柱とその周辺 | 1986 | アルミニウム |
※印 寄託作品