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美術館 > 展覧会のご案内 > 常設展(美術館のコレクション) > 2005 > 常設展示2005年度第3期(2005.9-12)

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

2005.9.22~12.25

第1室:昭和の洋画-1:風景と抽象

今期の常設第一室のテーマが「昭和の洋画-1」なのは年度始めに決まったことで、明治から時代を追って近代洋画の所蔵品を並べようという趣旨でした。「1」があるからには「2」へ続くはずで、前者で第二次大戦前の作品、後者で戦後の作品を展示することが想定されていたわけです。ところでたまたま、県民ギャラリーで開催される『染谷亜里可展』の会期も第三期常設の会期中にすっぽり納まるのですが、であれば、何か相互に関連しあうような展示ができないものかと思いいたったのも、双方を担当する者としては無理からぬことだったのでしょう(ちなみに第三室でのナバローンの作品も、ヴェルヴェットつながりで染谷の作品と呼応させようとの発想で選ばれたのですし、辻晉堂の作品は、『名品でたどる近代工芸のあゆみ』展を念頭においています)。

そこで考えたのが、まず、染谷展をその第五回とする、三重ゆかりの中堅作家の個展シリーズに関連する収蔵品を展示するというものでした。それら今村哲、館勝生、秋岡美帆、吉本作次の作品が制作されたのは正確には平成に属しますが、そこは地続きということで目をつぶるとして、彼らの作品から逆算して展示を組みたてるのであれば、1)抽象系の作品あるいは、2)三重関係の作品をならべるという選択肢が、すんなり浮かびます。しかしもう一声ほしい、もう一工夫できないものか。展示はきっちりした理念に基づかなければならないというわけでは必ずしもなく、むしろ一点一点の作品を活かすには、理念の強いしばりなどなくてもよいはずですが、ともあれ、「昭和の洋画」の「1」という外枠に引きずられたのでしょうか、今村・館・秋岡の作品といっしょに並べうる作品として、須田國太郎と鳥海青児の戦前の画面が思い浮かんだのでした。

須田と鳥海の作品はともに風景画ですが、その筆致や色調によって、山というモティーフは画面全体のひろがりに溶けこもうとしており、もって、目に見える個々の事物以上に、それらを包む自然のうごめきが表わされています。今村・館・秋岡の作品は一見抽象的ですが、やはり筆致や色彩の相互関連は、閉じた形態以上に、画面全体に充溢する空間のゆらぎを表わしており、それは、人間の尺度を超えた自然に通じるものと見なしてよいでしょう。この点で、風景と抽象という見かけのちがいにもかかわらず、昭和から平成にかけての日本の近代絵画に通底する一要素、大げさにいえば対象や世界の見方を引きだすことができるかもしれません。

そこからさらに、桂ゆき、宮崎進、香月泰男らの作品はきれいに所をえるように思われたわけですが、しかし他方、まず、風景画から抽象へというような単線的な展開を想定することはできませんし(抽象が成立したヨーロッパでの経緯と、それを輸入した日本の状況との違いはいうまでもなく)、次に、上に挙げた傾向は昭和洋画のごく一部を占めるものでしかありますまい。先の三重ゆかりの作家連の中でも、吉本の作風は上に記した傾向からははみだしています。そこで昭和洋画の多様性を少しでもとりこもうと、牛島憲之や児島善三郎を呼びだしたわけですが、当館の収蔵品や展示面積といった限界はおくにしても、そもそも、完全に客観的な歴史など原理的に不可能ではあるとして、それでも現在の視点から過去を再構成する際の恣意性の度合い・あり方には、注意するにこしたことはありません。

では今回の場合、展示を成立させた考え方が説得力を有するかいなかを判断する規準はどこにあるのでしょう? 少なくともその一つは、やはり、個々の画面が展示全体の中でどのように映るか、今までとちがった顔を見せるかを、一人一人の観者が確かめることにあるというべきなのでしょう。

(石崎勝基・学芸員)

「美術館コレクション第Ⅲ期展示、第1室:昭和の洋画-1:風景と抽象」より 欅しんぶん、no.162、2005.9.21

 

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

牛島憲之 1900-1997 貝焼場 1935(昭和10)年 油彩・キャンバス  
須田國太郎 1891-1961 信楽 1935(昭和10)年 油彩・キャンバス (財)岡田文化財団寄贈
鳥海青児 1902-1972 紀南風景 1936(昭和11)年 油彩・キャンバス  
児島善三郎 1893-1962 箱根 1938(昭和13)年 油彩・キャンバス  
元永定正 1922- 作品 1956(昭和31)年 油彩・キャンバス  
桂ゆき 1913-1991 作品 1958(昭和33)年 油彩・キャンバス  
宮崎進 1922- 石狩 1958(昭和33)年 油彩・キャンバス 作者寄贈
尾藤豊 1926-1998 1959(昭和34)年 油彩、キャンバス  
杉全直 1914-1994 Vと題して(コンポジションA) 1961(昭和36)年 油彩・キャンバス  
香月泰男 1911-1974 芒原 1968(昭和43)年 油彩・キャンバス  
浅野弥衛 1914-1996 作品 1975(昭和50)年 油彩・キャンバス  
諏訪直樹 1954-1990 PT-9056 1990(平成2)年 アクリル・綿布 賛美小舎:上田國昭・上田克子氏寄贈
鈴木道子 1954- PLANT-C 1995(平成7)年 銅版・紙  
館勝生 1964- jasper stone 1998(平成10)年 油彩・キャンバス  
今村哲 1961- ナンバーレス 2000(平成12)年 蜜蝋・顔料・アクリル、
キャンバス・パネル
 
吉本作次 1959- 樹下休息図 2000(平成12)年 油彩・キャンバス  
秋岡美帆 1952- 光の間 01-1-15-4 2001(平成13)年 NECOプリント・麻紙  
 

第2室:荻邨・小坡と京都画壇の画家たち

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

竹内栖鳳 1864-1942 虎・獅子図 1901(明治34)年 紙本墨画淡彩  
伊藤小坡 1877-1968 つづきもの(下絵) 1916(大正5)年 紙本墨画淡彩 伊藤正子氏寄贈
伊藤小坡 1877-1968 ふたば 1918(大正7)年 絹本着色  
伊藤小坡 1877-1968 山羊の乳(下絵) 1922(大正11)年 紙本淡彩 伊藤正子氏寄贈
伊藤小坡 1877-1968 はじらい 制作年不詳 絹本着色 川合東皐氏寄贈
伊藤小坡 1877-1968 化粧 明治時代末頃 絹本着色  
宇田荻邨 1896-1980 祇園新橋 1919(大正8)年 絹本着色 川合東皐氏寄贈
宇田荻邨 1896-1980 木陰 1922(大正11)年 絹本着色  
宇田荻邨 1896-1980 巨椋の池 1924(大正13)年 絹本着色 (財)岡田文化財団寄贈
宇田荻邨 1896-1980 淀の水車 1926(大正15/昭和元)年 紙本着色  
宇田荻邨 1896-1980 溪間(下絵) 1927(昭和2)年 淡彩・紙 (財)岡田文化財団寄贈
宇田荻邨 1896-1980 梁(下絵) 1933(昭和8)年 紙本墨画淡彩 (財)岡田文化財団寄贈
宇田荻邨 1896-1980 林泉 1935(昭和10)年頃 絹本着色  
 

第3室:ゴヤとスペイン美術

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

ムリーリョ、バルトロメ・エステバン 1617-1682 アレクサンドリアの聖カタリナ 1645-50年頃 油彩・キャンバス  
作者不詳   聖ロクス(ロック) 17世紀 油彩・キャンバス 有川一三氏寄贈
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ 1746-1828 アルベルト・フォラステールの肖像 1804年頃 油彩・キャンバス (財)岡田文化財団寄贈
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ 1746-1828 戦争の惨禍 1810-20年 エッチング他・紙  
    25. 彼らもまた   エッチング、ドライポイント、ビュラン  
    29. 当然の報いだ   エッチング、ドライポイント、ビュラン、バーニッシャー  
    47. この通りに起きた   エッチング、ラヴィ、ドライポイント、ビュラン、バーニッシャー  
    61. 彼らは血筋が違うんだ   エッチング、ラヴィ、ドライポイント、ビュラン、バーニッシャー  
ピカソ、パブロ 1881-1973 ロマの女 1900年 パステル、油彩・厚紙 三重県企業庁寄託
ピカソ、パブロ 1881-1973 ふたつの裸体 1909年 ドライポイント・紙  
ダリ、サルバドール 1904-1989 パッラーディオのタリア柱廊 1937-38年 油彩・キャンバス  
ミロ、ジョアン 1893-1983 女と鳥 1968年4月11日 油彩・キャンバス (財)岡田文化財団寄贈
タピエス、アントニ 1923- シンメトリックな黒 1984年 樹脂、カーボランダム、印刻・紙 寄託品
チリーダ、エドゥワルド 1924-2002 ビカイナ XVI 1988年 エッチング・紙  
チリーダ、エドゥワルド 1924-2002 エルツ 1988年 エッチング・紙  
ルビオ、アルフォンソ・サンチェス 1959- 苦み 1989年 混合技法・布 大山一行氏寄贈
アルバセテ、アルフォンソ 1950- 幻影 1 1990年 油彩・キャンバス 寄託品
ビアプラナ、ビセンス 1955- 土曜日 1990年 混合技法・キャンバス  
カルデイス、ジョアン 1948- R-816  2点組 1991年 グラファイト・紙  
ナバローン、ナティビダー 1961- 私のからだ:鎮痛と恐れ(パートIII)。あなたが私をかばう時、私は安心して休む 1997年 ヴェルヴェット、鉄、紐  
 

2階ギャラリー、ロビー

美術館のコレクション(2005年度常設第3期展示) 作品一覧

向井良吉 1918- 発掘した言葉 1958(昭和33)年 ブロンズ 作者寄贈
辻晉堂 1910-1981 ポケット地平線 1965(昭和40)年  
マルコ、アンヘレス 1947- 高速道路(連作「通行」) 1987年 鉄、アスファルト、脂  
新妻實 1930-1998 眼の城 1988(昭和63)年 ポルトガル産黒御影石  
ピロウス、アブドゥル・ジャリル 1933- 真心のこもった/友好使節 1989年 エッチング・紙  
ロン、ティエン・シン 1946- ここはどこですか? 1989年 エッチング, アクアチント・紙  
アヴィアド、ヴィルギリオ 1944- ヒロシマ,わが愛 1989年 エッチング, アクアチント・紙  
タン・スイ=ヒャン 1943- 聴経 1989年 エッチング, アクアチント・紙  
カルナラトネ、H.A. 1929- 三日月 1989年 リトグラフ・紙  
コー=ウドムヴィト、タヴォルン 1956- 儀式のシンボル No.18 1989年 木版・シルクスクリーン・金箔・ひも・紙  
保田春彦 1930- 柱と壁 1989(平成1)年 作者寄贈
保田春彦 1930- 壁の構造 1990(平成2)年 作者寄贈
ルビオ、アルフォンソ・サンチェス 1959- DC III 1990年 ミクストメディア、紙 大山一行氏寄贈
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