美術館のコレクション(2005年度常設第1期展示) 作品一覧
2005.3.29~6.26
1室 明治・大正の洋画
西洋絵画を初めて目にした日本人は、日本の伝統絵画にはなかった、対象をありのままに描き出すことができる写実的な表現力に驚き、これを高く評価しました。司馬江漢ら18世紀後半に活動した洋風画家はもちろん、江戸時代末から明治時代にかけて活躍した高橋由一、国沢新九郎、川上冬崖ら日本近代洋画の先駆者たちにとっても、遠近法や陰影に富んだ着色法を使いこなして、いかに対象をリアルに表現するかということが重要な課題の一つとなりました。今回出品されている伊勢松坂出身の画家岩橋教章(1835-1883)の筆になる《鴨の静物》は、水彩絵具を用い、非常に精密な筆遣いによって枚壁に吊された鴨の姿を緻密に描写した作品。教章の数少ない現存する絵画作品の一つです。ここには、高橋由一とはまた異なるスタイルによって、教章が徹底した写実表現を指向していたことをうかがうことができます。
チャールズ・ワークマン | 1832-1891 | 風景 | 不詳 | 油彩・キャンヴァス | 寄託品 |
アントニオ・フォンタネージ | 1818-1882 | 沼の落日 | c.1876-78年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
五姓田芳柳 | 1827-1893 | 婦人像 | 水彩・絹 | 寄託品 | |
岩橋教章 | 1835-1883 | 鴨の静物 | 1875年 | 水彩・紙 | |
川村清雄 | 1852-1934 | ヴェネツィア風景 | c.1913-34年 | 油彩・紙 | 井村二郎氏寄贈 |
川村清雄 | 1852-1934 | 梅と椿の静物 | 油彩・絹 | 藤井一雄氏寄贈 | |
五姓田義松 | 1855-1915 | 狩猟図 | 1894年 | 油彩・キャンヴァス | 寄託品 |
原田直次郎 | 1863-1899 | 老人像 | c.1896年 | 油彩・キャンヴァス | |
浅井忠 | 1856-1907 | 小丹波村 | 1893年 | 油彩・キャンヴァス | |
浅井忠 | 1856-1907 | フランス郊外 | 油彩・キャンヴァス | 寄託品 | |
安藤仲太郎 | 1861-1912 | 梅花静物 | 1889年 | 油彩・板 | |
黒田清輝 | 1866-1924 | 夏の海 | 不詳 | 油彩・板 | |
黒田清輝 | 1866-1924 | 薔薇の花 | 不詳 | 油彩・板 | |
久米桂一郎 | 1866-1934 | 秋景下図 | 1895年 | 油彩・キャンヴァス | |
藤島武二 | 1867-1943 | ローマの噴水 | 1908~09年 | 油彩・キャンヴァスボード | |
藤島武二 | 1867-1943 | セーヌ河畔 | 1906~07年 | 油彩・キャンヴァス | |
岡田三郎助 | 1869-1939 | 岡部次郎像 | 1898年 | 油彩・キャンヴァス | |
中村不折 | 1866-1943 | 裸婦立像 | c.1903年 | 油彩・キャンヴァス | |
満谷国四郎 | 1874-1936 | 裸婦 | c.1900年 | 油彩・キャンヴァス | |
鹿子木孟郎 | 1874-1941 | 津の停車場(春子) | 1898年 | 油彩・キャンヴァス | 鹿子木君子氏寄贈 |
鹿子木孟郎 | 1874-1941 | 狐のショールをまとえる婦人 | 1902年 | 油彩・キャンヴァス | |
青木繁 | 1882-1911 | 自画像 | 1905年 | 油彩・キャンヴァス | |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 建物のある風景 | 1910年 | 油彩・板 | |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 山 | 1915年 | 油彩・キャンヴァス | |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 枯木の風景 | 1924年 | 油彩・キャンヴァス | |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 木の間よりの風景 | 1918年 | 油彩・キャンヴァス | |
中村彝 | 1887-1924 | 婦人像 | c.1922年 | 油彩・キャンヴァス | |
中村彝 | 1887-1924 | 髑髏のある静物 | 1923年 | 油彩・板 | |
鈴木金平 | 1896-1978 | 静物 | 1925年 | 油彩・キャンヴァス | |
岸田劉生 | 1891-1929 | 麦二三寸 | 1920年 | 油彩・キャンヴァス | |
中川一政 | 1893-1991 | 目黒風景 | 1923年 | 油彩・キャンヴァス | |
村山槐多 | 1896-1919 | 自画像 | 1916年 | 油彩・キャンヴァス | |
関根正二 | 1899-1919 | 天使(断片) | c.1918年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
小出楢重 | 1887-1931 | パリ・ソンムラールの宿 | 1922年 | 油彩・板 | |
小出楢重 | 1887-1931 | 裸女立像 | 1925年 | 油彩・キャンヴァス | |
清水登之 | 1887-1945 | 風景 | 1921年 | 油彩・キャンヴァス | |
前田寛治 | 1896-1930 | 風景 | c.1924年 | 油彩・キャンヴァス | |
石井鶴三 | 1887-1973 | 中原氏像 | 1916年 | ブロンズ | |
中原悌二郎 | 1888-1921 | 若きカフカス人 | 1919年 | ブロンズ | |
戸張孤雁 | 1882-1927 | 虚無 | 1920年 | ブロンズ |
2室 近代の日本画と橋本平八
院展という展覧会名で広く親しまれている日本美術院は、明治31(1898)年、岡倉天心を中心に、橋本雅邦、横山大観、菱田春草、下村観山らが集まり創立した美術研究団体です。この在野の美術団体は、天心の理想主義的芸術理念を支柱に、東洋精神を基盤としながら新しい造形を求める芸術運動を展開しました。日本美術院の活動の中心は日本画ですが、一時期、彫刻や洋画部門が加わり、活動に厚みを増していたこともまた事実です。伊勢出身の橋本平八も日本美術院で活躍した彫刻家のひとりで、院展初出品作の《猫》は、平八自身が、「自分の肖像であり、身構え、心構えであり、技巧の上には方式である」と述べた、平八の出発点となる作品であるといえるでしょう。第2室では、日本美術院で中心的役割を果たした横山大観、前田青邨、小林古渓、安田靫彦、そして橋本平八などの作品を中心に展示し、日本近代美術の中核のひとつであった芸術活動の一端を振り返ります。
横山大観 | 1868-1958 | 満ちくる朝潮 | 1952年 | 紙本著色 | |
横山大観 | 1868-1958 | 春蘭 | 不詳 | 紙本著色 | 服部友氏寄贈 |
菱田春草 | 1874-1911 | 雨中猛虎図 | 不詳 | 紙本著色 | 服部友氏寄贈 |
小川芋銭 | 1868-1938 | 野渡新造船図 | 1930年 | 紙本著色 | |
小川芋銭 | 1868-1938 | 水郷十二橋 | 1933年 | 紙本淡彩 | |
平福百穂 | 1877-1933 | 太公望図 | 1927年 | 紙本著色 | |
小林古径 | 1883-1957 | 麦秋 | c.1915年 | 絹本著色 | |
小林古径 | 1883-1957 | 旅路 | c.1915年 | 絹本著色 | |
安田靫彦 | 1884-1978 | 小倉の山 | 1930年 | 絹本著色 | |
安田靫彦 | 1884-1978 | 天孫降臨画稿 | 不詳 | 紙本著色 | |
前田青邨 | 1885-1977 | 春 | c.1914-16年 | 絹本著色 | |
前田青邨 | 1885-1977 | 西遊記下絵 | c.1927年 | 紙本墨画 | |
中村岳陵 | 1890-1969 | 都会女性職譜(全7図) | 1933 | 紙本著色 | |
エレベーターガール | |||||
チンドン屋 | |||||
女店員 | |||||
レビューガール | |||||
女給 | |||||
看護婦 | |||||
奇術師 | |||||
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 山水図 | 1922年 | 紙本墨画 | |
岸田劉生 | 1891-1929 | 冬瓜茄子之図 | 1926年 | 絹本著色 | |
速水御舟 | 1894-1935 | 花の傍下絵 | 1932年 | 紙本著色 | |
速水御舟 | 1894-1935 | 鳥 | 不詳 | 紙本著色 | |
橋本平八 | 1897-1935 | 猫 | 1922年 | 木 | |
橋本平八 | 1897-1935 | 弁財天 | 1927年 | 木 | |
橋本平八 | 1897-1935 | 老子 | 1932年 | 木 | |
橋本平八 | 1897-1935 | 弱法師 | 1934年 | 木 | |
橋本平八 | 1897-1935 | 俳聖一茶 | 1935年 | 木 |
3室 19-20世紀の西洋美術
モネの《橋から見たアルジャントゥイユの泊地》と《ラ・ロシュブロンドの村》はともに、紫でサインが施されています。モネのサインはつねに紫というわけではありませんでした。しかしだからこそ、表情の異なる二つの画面主要部との関係で、なぜサインが紫でよいと判断されたのか、という問いをたててみることができるかもしれません。同様にルドンの《アレゴリー》においても、あざやかな朱色および背景との関係で、紫はどのような役割を果たしているのかと問うことができるでしょう。思えば紫は、西洋近世絵画において、前面に出ることの少なかった色です。肌の色や大地の茶色などに比べて、安定感に乏しい感触を有すると見なされたのでしょうか。ともあれ紫にかぎらず、一つ一つの色が個々の画面でどのような役割をはたしているのか、それを考えるのも絵を見る楽しみの一つといえるかもしれません。
フランシスコ・デ・ゴヤ | 1746-1828 | アルベルト・フォラステールの肖像 | c.1804年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
オーギュスト・ルノワール | 1844ー1919 | 青い服を着た若い女 | c.1876年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
クロード・モネ | 1840ー1926 | 橋から見たアルジャントゥイユの泊地 | 1874年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
クロード・モネ | 1840ー1926 | ラ・ロシュブロンドの村 | 1889年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
オディロン・ルドン | 1840ー1916 | アレゴリー | 1905年 | 油彩・キャンヴァス | |
ジョルジュ・ルオー | 1871-1958 | キリスト磔刑 | 1939年 | 油彩・紙、キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
モーリス・ド・ヴラマンク | 1876-1958 | 風景 | 不詳 | 油彩・キャンヴァス | 寄託品 |
ラウル・デュフィ | 1877-1953 | 黒い貨物船と虹 | 1949年頃 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
マルク・シャガール | 1889-1985 | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
ジョアン・ミロ | 1893-1985 | 女と鳥 | 1968年 | 油彩・キャンヴァス | (財)岡田文化財団寄贈 |
アントニ・タピエス | 1923- | ひび割れた黒と白い十字 | 1976年 | ミクスドメディア・木 | |
ジェラール・ティティス=カルメル | 1942- | 四季・秋より IV | 1989年 | アクリル・紙 | |
ジェラール・ティティス=カルメル | 1942- | 四季・秋より V | 1989年 | アクリル・紙 | |
ヤン・フォス | 1936- | 無題 | 1983年 | 油彩・キャンヴァス | 寄託品 |
アルフォンソ・サンチェス・ルビオ | 1959- | 夢の火 | 1990年 | 油、ミクスドメディア・キャンヴァス、木 | |
ホセ・マリア・シシリア | 1954- | 衝立・小さな花々 IV | 1998年 | 油彩、蝋、紙・板 | |
ホセ・マリア・シシリア | 1954- | 衝立・小さな花々 V | 1998年 | 油彩、蝋、紙・板 | |
ビセンス・ビアプラナ | 1955- | 起源 | 1989年 | ミクスドメディア・キャンヴァス | 寄託品 |
リン・チャドウィック | 1914- | 三角III | 1961年 | ブロンズ | |
ラモーン・デ・ソト | 1942- | 連絡階段 | 1997年 | 鋼 | |
ラモーン・デ・ソト | 1942- | 沈黙の建築 IV | 1997年 | 鋼 |
2階ギャラリー
恩地孝四郎 | 1891-1955 | 初期木版画 | 1914-15年 | 木版 |
恩地孝四郎 | 1891-1955 | 白い花 | 1941年 | 木版 |
恩地孝四郎 | 1891-1955 | 『とんぼの眼玉』の著者北原白秋像 | 1943年 | 木版 |
恩地孝四郎 | 1891-1955 | 『氷島』の著者 萩原朔太郎像 | 1943年 | 木版 |
佐藤忠良 | 1912- | 円い椅子 | 1973年 | ブロンズ |
舟越保武 | 1912-2002 | OHNO嬢 | 1982年 | ブロンズ |
マルコ、アンヘレス | 1947- | 高速道路(連作「通行」) | 1987年 | 鉄、アスファルト、脂 |
新妻實 | 1930-1998 | 眼の城 | 1988年 | ポルトガル産黒御影石 |
保田春彦 | 1930- | 幕舎試作・鉄 | 1991年 | 鉄 |