美術館のコレクション(2004年度常設第4期展示) 作品一覧
2004.12.28~2005.3.27
1室 日本洋画の叙情性
今回は明治期から現代に至るまでの風景画を通して、日本人洋画家の叙情性やその感覚を探ってみたいと思います。油絵はヨーロッパで生まれた絵画技法で、日本では明治期より本格的に実践されましたが、なかでも風景画は多くの画家によってとりあげられてきたジャンルです。これまで本場ヨーロッパに留学した画家たちは、ヨーロッパの美術館を訪ねた際、風景画に比べて宗教画や歴史画、あるいは肖像画のジャンルが驚くほど多いのに気づいたことと思われますが、それでも日本ではそれらのジャンルが根付くことはありませんでした。教義を伝えたりその人物の偉業を称えたりと、「意味するもの」を伝える手段として成立したこれらのジャンルよりも、日本人画家の多くは感覚的な世界が直接表現できる風景画を選びました。そのことに批判的な見方もできますが、一方で風景を通して叙情性や鋭い感性を表現しつづけたところにすぐれた日本的油絵が生まれたことも否定できません。
浅井忠 | 1856-1907 | 小丹波村 | 1893(明治26)年 | 油彩・キャンバス(パネル貼り) | 27.0×39.0 |
鹿子木孟郎 | 1874-1941 | 京洛落葉 | 1904(明治37)年 | 油彩・キャンバス | 60.4×75.5 |
和田英作 | 1874-1959 | 富士 | 1909(明治42)年 | 油彩・キャンバス | 53.3×72.9 |
村山槐多 | 1896-1919 | 人物のいる農村風景 | 1911-18(明治45-大正9)年 | 鉛筆・紙 | 38.3×53.0 |
川村清雄 | 1852-1934 | ヴェネツィア風景 | 1913-34(大正4-昭和9)年 | 油彩・紙 | 33.6×100(イメージサイズ),39.5×106 |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 木の間よりの風景 | 1918(大正7)年 | 油彩・キャンバス | 54.3×45.5 |
岸田劉生 | 1891-1929 | 麦二三寸 | 1920(大正9)年 | 油彩・キャンバス | 37.5×45.5 |
古賀春江 | 1895-1933 | 煙火 | 1927(昭和2)年 | 油彩・キャンバス | 90.9×60.6 |
佐伯祐三 | 1898-1928 | サンタンヌ教会 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 72.5×59.7 |
小出楢重 | 1887-1931 | 六月の風景 | 1929(昭和4)年 | 油彩・キャンバス | 53.0×65.1 |
海老原喜之助 | 1904-1970 | 森と群鳥 | 1932(昭和7)年 | 油彩・キャンバス | 73.5×100 |
野田英夫 | 1908-1939 | 風景 | 1932(昭和7)年 | 水彩・紙 | 19.5×12.6 |
黒田頼綱 | 1909-1998 | 波切風景 | 1933(昭和8)年 | 油彩・キャンバス | 112×146 |
三宅克己 | 1874-1954 | 箱根双子岳 | 1933(昭和8)年 | 水彩・紙 | 80.3×100 |
牛島憲之 | 1900-1997 | 貝焼場 | 1935(昭和10)年 | 油彩・キャンバス | 152×182 |
須田國太郎 | 1891-1961 | 信楽 | 1935(昭和10)年 | 油彩・キャンバス | 72.6×116 |
鳥海青児 | 1902-1972 | 紀南風景 | 1936(昭和11)年 | 油彩・キャンバス | 97.0×146 |
梅原龍三郎 | 1888-1986 | 霧島 | 1936(昭和11)年 | 油彩・カンヴァス | 65.0×80.3 |
麻生三郎 | 1913-2000 | 夕日 | 1943(昭和18)年 | 油彩・板 | 15.9×23.5 |
松本竣介 | 1912-1948 | 風景 | 1946(昭和21)年 | インク、コンテ、鉛筆・紙 | 24.0×34.0 |
木村荘八 | 1893-1958 | 日没 | 1949(昭和24)年 | 油彩・キャンバス | 33.2×45.0 |
島田章三 | 1933- | 海のみえる風景 | 1956(昭和31)年 | コンテ・紙 | 17.0×25.0 |
宮崎進 | 1922- | 石狩 | 1958(昭和33)年 | 油彩・キャンバス | 65.2×90.9 |
麻生三郎 | 1913-2000 | 大崎駅付近 | 1959(昭和34)年 | インク・紙 | 29.5×20.0 |
野口弥太郎 | 1899-1976 | 長崎の情緒 | 1965(昭和40)年 | 油彩・キャンバス | 146×114 |
山本正道 | 1941- | エトルリアの壺 | 1985(昭和60)年 | ブロンズ | 20.0×160×30.0 |
2室 宇田荻邨・伊藤小坡の本画と下絵
美術館では、一般的に、作り手が完成したと認める作品が多数を占めており、近代以降の作品では、その完成した画面に画家が落款を加えたものが多くなります。今期の第2室では、本画とよばれるこのような完成作品に加えて大下絵も展示しています。
伝統的な日本画の場合、画家は制作過程に応じた幾種類かの下絵を経て本画にのぞみます。画家は、草稿や小下絵でモチーフや画面構成を模索し、本画の前段階には完成作とほぼ同じ大きさ、同じ構図の大下絵を描きます。下絵類と、それをもとに制作された本画との比較が絵画制作とそれにともなう思考の過程を考える一助になることはいうまでもありません。また、宇田荻邨の《花畑》(大下絵)がそうであるように、行方しれずになってしまった本画を類推することをも可能にするのです。一方で、そのような資料としての役割にとどまらず、純粋に鑑賞画として、本画に負けない生き生きとした魅力をもつ下絵に出会うことも決して少なくはありません。
伊藤小坡 | 1877-1968 | ふたば | 1918(大正7)年 | 絹本着色 | 190×101 |
伊藤小坡 | 1877-1968 | ふたば(下絵) | 1918(大正7)年 | 紙本墨画 | 194×104 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 祇園新橋 | 1919(大正8)年 | 絹本着色 | 119×86.5 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 夜の一力(下絵) | 1919(大正8)年 | 淡彩・紙 | 139×140 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 祇園新橋(下絵) | 1919(大正8)年 | 淡彩・紙 | 120×85.0 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 木陰 | 1922(大正11)年 | 絹本着色 | 138×140 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 木陰(下絵) | 1922(大正11)年 | 淡彩・紙 | 129×123 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 花畑(下絵) | 1923(大正12)年 | 淡彩・紙 | 143×140 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 巨椋の池 | 1924(大正13)年 | 絹本着色 | 194×165 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 寒汀宿雁 | 1939(昭和14)年 | 絹本淡彩 | 175×173 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 寒汀宿雁(下絵) | 1939(昭和14)年 | 淡彩・紙 | 180×173 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 祇園の雨 | 1953(昭和28)年 | 絹本着色 | 97.9×117 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 雪の嵐山 | 1961(昭和36)年 | 紙本着色 | 71.0×92.5 |
宇田荻邨 | 1896-1980 | 淀の水車 | 制作年不詳 | 墨・紙 | 41.8×53.7 |
伊藤小坡 | 1877-1968 | 母子図(下絵) | 制作年不詳 | 紙本墨画淡彩 | 215×93.0 |
3室 19-20世紀の西洋絵画 フランスを中心に
西洋美術史では、特定の場所がある芸術潮流を生みだす後押しをした例が見受けられます。16世紀のルネサンスではフィレンツェが、17世紀のバロックではローマが、そして19世紀の印象主義以降の近代絵画ではパリがその役目を果たしました。「都市には磁場がある」とは少々気取った物言いですが、その吸引力は現在の私たちが思い浮かべる観光名所的魅力を超えるものだったに違いありません。一見関係ないように思える、街のそぞろ歩きや、たわいもないおしゃべりは、気づかぬうちに画家の心に沈殿し、同好の士の間に芽生えた連帯感や対抗意識がさらなる歩みを促します。都市とはすなわち、ネットワークでもあると言えるでしょう。それは絶えず収縮と拡張を繰り返し、まるで生命のように成長と衰退を見せるのです。私たちが、そこから生み落とされた作品に向かうとき、膨大な網の結び目をたどっていると言っても過言ではありません。
モネ、クロード | 1840-1926 | 橋から見たアルジャントゥイユの泊地 | 1874年 | 油彩・キャンバス | 62.0×81.0 |
ルノワール、オーギュスト | 1841-1919 | 青い服を着た若い女 | 1876頃 | 油彩・キャンバス | 42.9×31.0 |
ティソ、ジェームズ(ティソ、ジャック=ジョセフ) | 1836-1902 | 夏 | 1878年 | エッチング, ドライポイント・紙 | 37.6×20.8 |
ピサロ、カミーユ | 1830-1903 | 農夫モロン親爺 | 1879年 | エッチング・紙 | 10.5×16.3 |
モネ、クロード | 1840-1926 | ラ・ロシュブロンドの村(夕暮れの印象) | 1889年 | 油彩・キャンバス | 73.9×92.8 |
ピサロ、カミーユ | 1830-1903 | 鋤で耕す農婦 | 1890年 | エッチング・紙 | 11.5×11.9 |
ドガ、エドガー | 1834-1917 | 裸婦半身像 | 1891年頃 | コンテ、赤チョーク・紙 | 43.0×50.0 |
トゥルーズ=ロートレック、アンリ・ド | 1864-1901 | ムーランルージュのイギリス人 | 1892年 | リトグラフ・紙 | 47.5×37.0 |
ルドン、オディロン | 1840-1916 | アレゴリー | 1905年 | 油彩・キャンバス | 46×35.5 |
ルオー、ジョルジュ | 1871-1958 | 受難(パッション) シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)17点, 木版82点 アンドレ・シュアレス著 | 1935あ36年(1939公刊) | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色), 木口木版・紙 | 44.5×33.5(紙寸) |
マイヨール、アリスティード | 1861-1944 | 『ダフニスとクロエ』挿絵本 | 1937年 | 木版・紙 | 21.0×13.9 |
ルオー、ジョルジュ | 1871-1958 | キリスト磔刑 | 1939年頃 | 油彩・紙(キャンバスで裏貼) | 62.7×47.1 |
ブラック、ジョルジュ | 1882-1963 | 葉・色彩・光 | 1953年 | リトグラフ・紙 | 97.5×60.0 |
ヴラマンク、モーリス・ド | 1876-1958 | 『辺境伯』 挿絵本 ル・ビアン著 | 1955年 | 木版・紙 | 24.0×18.8 |
シャガール、マルク | 1887-1985 | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンバス | 150×120 |
シャガール、マルク | 1887-1985 | 版画集「サーカス」 全38点 | 1967年 | リトグラフ・紙 | 42.0×32.0, 42.0×64.0 |
2階ギャラリー
長谷川潔 | 1891-1980 | 版画集「ポートレート」 全10点 | 1963(昭和38)年 | 銅版画・紙 | 33.0×25.5 |
浅野弥衛 | 1914-1996 | 作品 | 1986(昭和61)年 | 木・オイルスティック | 77.5×96.5×17.0 |
浅野弥衛 | 1914-1996 | 作品 | 1986(昭和61)年 | 木・オイルスティック | 81.0×81.0×81.0 |
マルコ、アンヘレス | 1947- | 高速道路(連作「通行」) | 1987年 | 鉄 、アスファルト、脂 | 96.0×44.0×500 |
新妻實 | 1930-1998 | 眼の城 | 1988(昭和63)年 | ポルトガル産黒御影石 | H145.0×W41.0×D48.0 |
保田春彦 | 1930- | 幕舎試作・鉄 | 1991(平成3)年 | 鉄 | 129×90.0×50.0 |