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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > Hill Wind (vol.11~24) > 館蔵品紹介 ゴヤの《妄》 美術館ニュース Hill Wind 19(2008年6月)

館蔵品紹介 ゴヤの《妄》

第2銅版画集《戦争の惨禍》(1810-20年制作、初版=1863年出版)、第3銅版画集《闘牛技》(1815-16年、第4版=1905年出版)に続き、ゴヤの第4銅版画集《妄》(1815-24頃)全22点がこのたび収蔵されることになりました。22点の内18点は第8版(1930年出版)にあたり、初版(1864年出版)には比べるべくもないにせよ、「きわめてよく刷られており、第2版以降ではおそらくもっとも優れたものである」とされています(Tomas Harris, Goya. Engravings and Lithographs, Volume Ⅱ, Catalogue Raisonne, San Francisco, 1983, p.371, p.434)。追加の4点は『ラールL'Art』誌が1877年、シャルル・イリアルトの論考「銅版画家ゴヤ」に付して刊行したものです(TOME 9, troisieme annee, p.6, p.40, p.56, p.82の対面頁)。

 

《戦争の惨禍》同様ゴヤの生前には刊行されず、18点のセットはサン・フェルナンド王立美術アカデミーから《諺》のタイトルで出版されてきました。ただ試し刷りには《…の妄 Disparate》との書きこみがあり、こちらがゴヤの意図に沿うものと考えられています。

 

《戦争の惨禍》の大半と《闘牛技》では現実に向けられた冷厳なまでの視線が支配的なのに対し、《妄》はゴヤのもう一つの側面である幻想性を前面に出した連作です。もっともゴヤにおける幻想性は現実から遊離したものではなく、むしろ目に見える現実の奥底に隠れた何かへの視線に根ざしています。銅版画のさまざまな技法を駆使して、人間や動物などの柔軟でもあれば堅固でもある形態が暗がりに浸された空間と強く緊張しつつ配され、人間や社会がその底に潜ませている闇に形を与えているといえるでしょうか (Ik)。

 

ゴヤ《妄》一覧

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※この記事は2008年6月15日発行「Hill Wind 19」に掲載されたものです。

 
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