本誌のバックナンバー一覧をウェブサイトで眺めてみると、学校美術館を除けば意外にも、移動美術館をタイトルに掲げた記事は今までありませんでした。かろうじて旧ひる・ういんど23号(1988.7)の「ひる・とおく」でとりあげられたばかりです。他方やはりサイトの年報によれば、開館の翌年1983年から85年までの3年間は講演会と美術館の活動を紹介する映画の上映を中心とした〈移動美術講演会〉が開かれており、84年度からわずかながら館蔵品の展示も併設したということです。そして86年以降移動美術館として、友の会の協力を得ながらすでに20年以上継続されてきたことになります。2003年度には〈学校美術館〉、2006年度には〈三重ホスピタル・アート・ギャラリー〉という変奏も加わりました。 もとは各地で行なわれてきた〈移動図書館〉にヒントを得たのでしょう、県内、とりわけ美術館所在地の津まで足を運ぶのはたいへんだという遠隔地を中心に催されてきた移動美術館ですが、会場となる施設に空調や照明の設備が整っているとはかぎらない点を考えれば、作品の保存状態にプラスとは必ずしもいいがたい場合があることもいなめません。それでも20年以上にわたって続けられてきたのは、各開催地での反応の良さ、何より喜んでもらっていることが如実に伝わってくるという経験の蓄積ゆえなのでしょう。 とはいえ市町村および県での近年の財政難もあって今後どうなっていくのかは不明です。そんな中2007年度は、10月に四日市の主体会病院で三重ホスピタル・アート・ギャラリーを、11月に員弁コミュニティプラザで3年目となる移動美術館『色彩遊戯』を開催しました。第3期常設や『数珠つなぎ展』との作品のとりあいを経た結果、期せずして色彩や遊戯性という視点でくくれるような出品リストになったと思うのですが、どのように受けとめられたことでしょうか。(Ik) |
![]() 三重ホスピタル・アート・ギャラリー 主体会病院の会場より
![]() 移動美術館 員弁コミュニティプラザの会場より
![]() 移動美術館 員弁コミュニティプラザの会場より |