2007年11月13日[火]-12月24日[月] コラボレーションという外来の言葉が、テレビや雑誌で使われるようになって久しくなります。今や当館の館長までもがよく口にするほどです。音楽や映像やマンガはもちろんのこと、会社でのプロジェクトから村の行事にいたるまで、異なる才能や技術をもった人たちが協働すれば、ときにびっくりさせられるほどの成果をもたらすことがあります。 そうした独創的なものづくりは、個々人のアイデアが出発点になっていますが、そのアイデアが天から降ってくることはめったにありません。人は無の状態から何かをつくりはじめることは不可能に近く、おおよそ何らかのきっかけを必要とします。そのきっかけは自分のまわりを丹念に観察して生まれることもありますが、より大きな割合を占めているのは人との「関わり」ではないでしょうか。きっかけやアイデアは、他愛もない会話から偶然生まれることもありますし、ものづくりの過程でさえも、人との関わりによって軌道が変わり、洗練させられることがしばしばあります。言い換えますと、個人の独創性なんてものは、ほんのちょっとしかなくて、そのほんのちょっとの独創性に人との関わりをプラスすれば、とても面白いものができますし、どの人と関わるか、どの人と出会うかで、独創性を変化させることだってできると思います。 さて、本題の美術館に眼を向けてみますと、そこには個性きらめく作品がいくつも並んでいます。ときにはその計り知れない個性と才能に嫉妬してしまう場合もあります。でも、上記の考え方でいけば、美術家もわたしたちと同じ人間なので、その個性の成立には何かのきっかけが必ず存在するはずです。 そこで、今回の展覧会は、さまざまなきっかけのなかから、美術家同士の関係に焦点をあて、個性の謎解きに迫りたいと思います。たとえば画家山本鼎と村山槐多と横山大観、梅原龍三郎と安井曽太郎に坂本繁二郎、阿部展也とアントニ・タピエス…。開館して25年、おかげさまで少し自慢できるぐらいに充実した三重県立美術館のコレクション。それらを美術家同士で「数珠つなぎ」してみると、どんなドラマが待っているのでしょうか。(Ty) |
村山槐多《自画像》 |