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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > Hill Wind (vol.11~24) > 艶麗な線の画家 伊東深水の世界 美術館ニュース Hill Wind 12(2006年8月)

艶麗な線の画家 伊東深水の世界

2006年9月23日(土)~11月5日(日)

日本画家伊東深水は、鏑木清方、上村松園とともに近代を代表する美人画家といわれ、今も多くの愛好家がいます。

 

深水は、1898(明治31)年東京深川の出身、13歳で鏑木清方に入門し、翌年から作品を発表するようになります。18歳頃までは日本美術院などに出品し、また大正末年頃までは新版画運動に参加して時代の雰囲気を強く漂わせた木版画を数多く制作します。

 

大正10年代には《指》(大正11年)、《湯気》(大正13年)など抒情的な初期の代表作を発表した後、昭和に入ると《宵》(昭和8年)、《鏡獅子》(昭和9年)などで独自のスタイルを確立します。以後、1972(昭和47)年に74歳で亡くなるまで数多くの美人画を発表しました。

 

伊東深水の美人画は、江戸時代以来の浮世絵美人画に近代的な感覚を盛り込んだものといわれます。そうした深水美人画誕生には、画家が日常的に行っていたデッサンが大きな役割を果たしていました。

 

深水は「天性の素描家」といわれるほどデッサンに熱心で、その素描は没する直前の病床でも行われました。素描の主題は、女性像だけではなく、旅先の風景、花や動物など多岐に渡り、膨大な量にのぼります。それらの素描は深水芸術の成立を探る重要な資料であると同時に、精緻な観察眼と生き生きとした筆使いを示して絵画作品としても大きな魅力を持っています。

 

深水の素描作品は、現在では各地の美術館や個人コレクターが分蔵しています。今回の展覧会は名古屋市郊外の名都美術館の協力により、同館所蔵のデッサンを完成画をまじえて、(1)人物百態、(2)自然への眼差し、(3)旅の空にての三章に分けて紹介します。

 

完成画からは窺い知ることができない画家伊東深水の素顔と生気あふれるデッサンの魅力をお楽しみいください。

 

(Mi)

*この記事は2006年8月1日発行「Hill Wind 12」に掲載されたものです。
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